3年後、北アイルランド代表の行方は
ロイヤルメルボルンGCで開幕した「ISPSハンダワールドカップ」は今年、2016年のリオデジャネイロ大会で112年ぶりに正式種目に復活するオリンピックを見据えた競技フォーマットに様変わりした。前回大会まではダブルスによる団体戦がメインだったが、今大会では60人の出場選手が72ホールストロークプレーで賞金総額700万ドルを争う。団体戦も残されてはいるが、こちらは2人が出場している26か国がそれぞれの合計ストローク数を競うもので、賞金総額は100万ドル。あくまで個人戦がメインと言える。
そんな中、世界ランキング12位のグレーム・マクドウェルは違った意味で注目を集めている。マクドウェルは今週、北アイルランド出身の選手として、これまでのワールドカップなどの国別対抗戦と同様に「アイルランド代表」としてシェーン・ローリーとコンビを組んでいる。しかしオリンピックでは、他競技において北アイルランドはイングランド、スコットランド、ウェールズとともに「イギリス代表」の中に組み込まれるのが一般的だ。
様々な議論が勃発する中、12年のロンドン五輪では男子サッカーで数十年ぶりに「イギリス代表チーム」が発足。しかし“自国開催”での復活を終え、今後再結成される見通しは不透明だそうだ。
北アイルランドの行方として、話題の中心はやはり24歳のロリー・マキロイ。周囲の喧騒が激しいあまり、一時は五輪出場の拒否も示唆。そして今大会も参戦していない。マクドウェルは「政治的、地域的なすごく難しい問題だから、僕やローリーはここ数年ずっと答えに困ってきた。あちらを立てれば、こちらが立たず…だからどちらかを選ぶのは本当に難しい」と言う。ただし今大会、そして3年後を見据え「今回がオリンピックのレギュレーションであれば、16年のオリンピックでもアイルランドでプレーするはずだ。僕らはいつのワールドカップもアイルランド代表としてプレーしてきた」と主張も欠かさない。
R&Aのトップ、ピーター・ドーソン氏をはじめ、ゴルフ界は北アイルランドおよびアイルランド勢に同情的。だが最終的には国際オリンピック委員会(IOC)の判断を仰ぐことになる。
近年、マクドウェルに続いてマキロイ、ダレン・クラークと立て続けに北アイルランド勢がメジャー大会を制覇し、ゴルフでの同国の実力は証明済み。だからこそ注目を集めている問題ではある。ゴルフが今後、他競技における同国代表への在り方に何らかのアクションを起こすかもしれない。(オーストラリア・メルボルン/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw