初出場の上田諭尉「タイガーと回るまでは…」
今季の海外メジャー第2戦「全米オープン」は13日(木)、ペンシルベニア州のメリオンGCで開催される。5月末の日本地区予選を通過した上田諭尉は、39歳にしてメジャー初出場。練習ラウンドから難関コースに圧倒されながらも、世界最高峰での戦いに胸を躍らせている。
口にした夢が、すぐに正夢に。この春はまさに“有言実行”の季節だった。上田は5月、日本ツアーの選手会イベントで三重・桑名市内の小学校を訪問。交流イベントを楽しんだ後、その場で「メジャー大会に出たい」と小学生を相手に宣言した。するとそれから3週間後、茨城県の大利根カントリークラブで行われた予選会に出場。さっそくそのチャンスを活かして見せたのだった。
しかしながら、振り返ればこのチケットをもぎ取った1日36ホールの長丁場も、なんだかドタバタしていた。前日に練習ラウンドを予定していたが、これを急きょキャンセル。過去にツアートーナメント・レクサス選手権が開催されていた大利根CCの東コースはプレー経験があると、たかをくくっていた。しかし、今回実際に競技会場となったのは隣接の西コース…。谷口徹の「お前、それちゃうぞ」との言葉で事実を知ったのも前日だった。
さらに“ぶっつけ本番”となったラウンドでは、前半を終えた段階でなんと独走状態で単独トップに立っていたが、同伴競技者が相次いで途中棄権し、最後は1人でのプレーを余儀なくされることに。完全にペースを見失い、後半はボギーを連発。息も絶え絶えに、松山英樹、ハン・ジュンゴン(韓国)に次いでなんとか3位の座にしがみついたのだった。
今大会はアジアンツアーを中心に海外経験が豊富な塚田好宣に、おおいに世話になりながら米国に乗り込んできた。初の練習ラウンドのスコアは「84」。そして開幕2日前の11日(火)は「79」。冗談半分、真剣み半分の口調で「80を切るのが目標だった。初日から5打縮まったから、このままいけば…そうはいかんか」と笑う。また、「フェアウェイに置かせてくれない威圧感、圧迫感がある」とコースの難度を再確認しながら、「今日はまだ火曜日なのに、日本の最終日よりもギャラリーが多いんや…」とメジャーの雰囲気を存分に味わっている。
この日、練習ラウンドを終えると、視線の先の1番ティにはまさにプレーを開始したタイガー・ウッズの姿があった。「カッコいいなあ。ゴルフも上手くて、スタイルも最高に良いやないか…」と思わずつぶやく。しかし上田、実は専大4年の時に学生の試合で、当時スタンフォード大学の2年生だったウッズと練習ラウンドをともにした経験があった。
年下のスターのプレーに「100回やっても勝てねえ」と驚嘆した当時だったが、「いつかもう一回、こいつと一緒に回るまで、ゴルフやめねえぞ」と胸に誓ったのもこの時だった。
あれから10数年。その記憶も次第に鮮明になる。「今回は(同組でのプレーは)無理かな」と開幕前に早くも天を仰いだ。それでもあの頃に立ち返る、新しい夢をまた、子供たちに語る姿が見られるのも、そう遠くはないはずだ。(ペンシルベニア州アードモア/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw