PGA Tour Rookie / Ryo Ishikawa(2) 新しいドライバー
米国男子ツアーのメンバーとしてプロ6年目を迎えた石川遼は今季、新たにキャロウェイゴルフと用具契約を結んだ。かねてからオデッセイのパター、そして昨年11月からはキャロウェイ製のウェッジをテストするなどしてきたが、ウッド、アイアンを一気に新調。ウエアやウエアのロゴに、こちらが見慣れるのも少々時間がかかるだろうか。
石川が今季初戦の「ヒュマナチャレンジ クリントンファウンデーション」で握ったクラブはほとんどが、この春の新商品。注目されたドライバーは、「RAZR FIT XTREME ドライバー」(レーザー・フィット・エクストリーム・ドライバー)を選んだ。
こちらのドライバーは、シャフトとヘッドの結合部分でフェースアングルを3段階に変更できる、いわゆる“カチャカチャ”タイプ。加えて、ヘッドのヒール部分とトウの部分にそれぞれ重量の異なった“重り”を入れることでヘッドの重心位置を変えることができる(同ブランドではこの2つの技術をオプティフィット テクノロジーとして記載)。
この重心位置の可変システムは、簡単に言えば鉛(なまり)をヘッドに張って調整するようなもの。「スライスが出る人は、ヒール(ネック)側に鉛を貼ってヘッドを返りやすくする。逆にフックに悩む人はトウ側に貼る」といった“お助け術”を知るアマチュアゴルファーの方も多いはずだ。
2月下旬に発売されるこの商品だが、出荷時の状態ではそれぞれのウエイトは「トウ1g、ヒール9g」の予定。ドローボールが出やすい設定としている。では石川の場合は?というと、現在のところ「トウ7g、ヒール8g」だそうだ。
しかしこのセッティング、同社のプロ担当によれば「珍しいタイプ」だという。「プロゴルファーはどちらかというと“左に行かない”設定を好む選手が多いんです」。
石川の場合は、前述の一般市場に出される設定ほどではないが、ヒール側のウェイトの方が重い。しかし「多くのプロは4~5gの差をつけて、トウ側の方を重くしています」とのこと。また「遼選手のドライバーやフェアウェイウッドを構えて『フェースがかぶっている』と感じるプロは多いはず。もちろん微妙な違いで、普通に見ればストレートなんですが・・・。でも彼はどちらかと言うと、多くのプロが使う(ヘッドの)“逃げ顔”を好みません。インパクトで手首を返してボールを持っていくイメージが出るのを好まないようです。パターについても同じですね」。手先の余計な動きを、視線から防ぐためのアレンジのようだ。
ちなみに石川は現在、特注モデルの製作を同社にオーダーしている。一般市場に出回るのはこの“カチャカチャ”ネックのタイプのみだが、これを失くしたモデルを要望。日によってクラブのセッティングをいじることが可能なものではなく、日々のスイングの状態を把握するため、シンプルなものを握りたいという。
「僕はクラブ選びに関して他の選手よりも鈍感だと思う。アイアンはものによってグースやフェースの高さ、光り方も違う。でも自分はそうであっても、それぞれの道具を受け入れられるタイプ。こういう性格で良かった」とは石川の弁。革新的なテクノロジーに感謝しながらも、スイング構築を最大限(過剰なまでにも)優先させるスタイルは10代の頃と変わらない。(カリフォルニア州ラ・キンタ/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw