石川遼、一人ラウンドの功罪
来季のシード権獲得を目指し、先週から米ツアー5連戦に挑んでいる石川遼。初戦となった「クラウンプラザインビテーショナル」では1打及ばず予選落ち。2戦目となる「ザ・メモリアルトーナメント」での巻き返しを期しているが、この日の練習ラウンドを見ていて、少し気がかりな点があった。
それは、練習ラウンドを一人だけでこなしていること。今週月曜日、そして火曜日と各18ホールずつを回ったが、共に一人きりでのラウンドだった。途中、石川とすれ違ったベ・サンムンは、ノ・スンヨル、チェ・キョンジュというスリーサム。同郷の大先輩と、同年代のライバルという刺激的なペアリングだ。今週は今田竜二が出場しているが、今田は今季絶不調の真っただ中。石川とベ・サンムンの立場を単純比較はできないが、二人が本番前に得られる情報量の差は決して小さくないはずだ。
一人でラウンドする理由を聞くと、「今のところ一人でやることに慣れちゃっているので、一人の方が気が楽」なのだという。「先週もサバティーニに誘われたけど、時差ボケで練習し始めだったから“あと1時間くらい練習したいんだ”って言ったら、じゃあまた今度って感じで。誘ってはくれるんですよね」。厳しい言い方をすれば、自ら積極的に誰かを誘うという域には、まだ達していないのだ。
石川は、クラブハウスの選手ロッカーをほとんど使わないことでも有名だ。練習器具や荷物は置くが、自らが足を踏み入れることはめったにない。ツアーに溶け込み、選手と信頼関係を結び、環境になじむ。トーナメントを戦う上で必要とされるゴルフ以外の部分で、まだやるべきことが多くあるのではないだろうか。
それは、貪欲さとも似ている。最近の彼のプレーを見ていて、どうも気持ちが入っていないように思う。簡単にダブルボギーをたたいてしまう。そんなシーンに欠落しているもの…。われわれがよく知る石川遼は、もっと堂々と困難に立ち向かって、それを克服していったはずだ。たとえ海外に居ても何も臆することはない。石川の背中をそっと押してあげられるのは、もしかしたら日本にいる大勢のファンたちなのかもしれない。(オハイオ州ダブリン/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka