石川遼の加藤キャディ「優勝する確率は…?」
米オハイオ州ファイヤーストーンCCで行われている世界ゴルフ選手権シリーズの今季第3戦「WGCブリヂストンインビテーショナル」。第3ラウンドを終えて、石川遼が通算11アンダーとし、首位のアダム・スコット(オーストラリア)に1打差の2位タイで、海外ツアー初勝利を目指して最終日を迎えることになった。
3日間いずれもアンダーパー。このムービングサタデーに石川は6つのバーディを積み重ね、トップに肉薄した。前週の「サン・クロレラクラシック」で予選落ちした姿は見る影もない。世界最高峰の舞台で堂々と暴れている。だがそんな19歳を、ラウンド中のプレーヤーに最も近い存在はつとめて冷静に見ている。
2007年の国内ツアー最終戦「日本シリーズJTカップ」から、もう3年半以上石川のバッグを担ぐ加藤大幸キャディはこの3日目の戦いぶりを振り返り「遼の場合、だいたいは練習場で今日は“いける”か、苦労するか分かる。今日は朝、あまり良くなくて、実際ラウンド中もティショットが良くなかった」と表情はいまひとつ。2週間前からまた新たに取り組んでいるスイング改造、修正についても「確かにそうだけど、遼の場合は毎週新しいことにチャレンジしているから、そこはあまり気にしていない」。今大会で決して劇的な変化が石川にあったわけではないという。
昨年の中日クラウンズで「58」を叩き出した時のような、いわゆる“ゾーン”に入っているのかというと「全然今日は入ってない」らしい。「遼の場合はティショットがとりあえずフェアウェイにあれば、基本的にアイアンが上手いのでピンに絡めることができる。でも今日はティショットが悪かったでしょ。本当に(ゾーンに)入っているときは、ほとんど話もしない。全然そういう次元じゃない」と、あっさり否定してくれる。
だが、ゾーンに入っているからといって勝てるとは限らないし、その逆もしかり。勝つ可能性は?と問うと「う~ん」と悩んで出した答えは「7割くらいはあるかな」。おいおい、ちょっと待て。ここはアメリカだぞ。でも「そんなの関係ない。遼の場合は」と笑う。
「もちろん緊張しなければ、自分のスイングができれば、途中でイライラしなければ」という条件は付く(ずいぶん多いけど)。ただ、その精神面でのタフさを除けば、ショットの飛距離、アプローチの精度など技術的な面では決して世界のトップに大きく見劣りするものではない。ウッズやミケルソンらのプレーを、選手たちと同じ場所で見てきたキャディが口にする言葉だ。
加藤キャディは快挙がかかるラウンドを前に「僕がドタバタしないようにすること。変わらないことが仕事。優勝争いをするときはいつもそう」と自らにも平常心を保つよう言い聞かせた。「あとは遼が日本で騒がしくなっているのを見て緊張してほしくない。今日はインターネットをあまり見ない方がいいな。携帯とパソコンは取り上げだ」。初体験となる米ツアーでの最終日最終組のプレー。石川は最も心強い存在とともに戦いに出る。(米オハイオ州アクロン/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw