「初めてあんなに苦しいと」 “エリート”金谷拓実の葛藤
◇メジャー第6戦◇全英オープン 事前(14日)◇ロイヤルセントジョージズGC(イングランド)◇7189yd(パー70)
久しぶりに会った金谷拓実は少し細くなった印象だった。「多分、ちょっとやせました」。5月の「全米プロ」から海外転戦へ飛び出して間もなく2カ月。2020-21年シーズンの国内ツアーで鮮烈なデビューを飾ったスーパールーキーはもがいていた。
「全米プロ」、「ザ・メモリアルトーナメント」と2試合連続予選落ちのPGAツアーで負ったダメージは大きかった。「結果が出なくて、すごく苦しかった。(米国にいたのは)たった1カ月でしたけど、初めてあんなに“苦しい”と思った」と包み隠さずに言う。
世界最高峰の舞台に集まるのはパワーも技術も並外れた猛者ばかり。コースもまた、とてつもない難しさだった。アマチュア時代からエリート街道を歩み、国際経験だって豊富。それでも「米ツアーのレベルは、自分が想像していた以上に高かった」。焦燥感ばかり募った。
彼らのようにプレーしなければ、ここではやっていけない―。「でも、短期間で変えることはできなくて。それでいろいろ迷ってしまったところはある。『ここで戦うには、こんなんじゃダメだ』と思いながらプレーしていたから、そういうのが苦しかった」と振り返る。「自分で望んで来たこと」と歯を食いしばれる根性の持ち主でも、自分で自分を否定するような日々は、やっぱりつらい。
6月に受けた「全米オープン」の最終予選会を突破できず、翌週のスケジュールがポッカリ空いた。コーチにZoomをつなぎ、帯同キャディ、トレーナーともじっくり話し合った。「そこで(気持ちを)整理して、ヨーロッパに入れました」。スポット参戦した欧州ツアー2試合で17位、28位。「いまはまだ(ひと皮むけたか)わっかんないですけど…」と笑いながら、「米国のときに比べたら、良くなっている自信はある」と言える。
「いまは(まず)ヨーロッパで頑張りたいというか、もっともっといろんな経験を積んで、結果を残してやっていきたい」。アフィリエイトメンバーから欧州ツアー参戦の足掛かりをつかみ、PGAツアーへ挑むルートをしっかりと描き直した。この「全英オープン」も夢につながる大事な大事な一戦だ。(イングランド・サンドウィッチ/亀山泰宏)
■ 亀山泰宏(かめやまやすひろ) プロフィール
1987年、静岡県生まれ。スポーツ新聞社を経て2019年にGDO入社。高校時代にチームが甲子園に出場したときはメンバー外で記録員。当時、相手投手の攻略法を選手に授けたという身に覚えのないエピソードで取材を受け、記事になったことがある。