2015年 全英リコー女子オープン

朴仁妃がメジャー4大会優勝 「もちろんグランドスラム」は本当か?

2015/08/03 08:12
昨年のリベンジ…全英初制覇の朴仁妃は“グランドスラム”を自認した

スコットランドのターンベリーで開催された「全英リコー女子オープン」。混戦の最終日に世界ランキング1位の朴仁妃(韓国)が力を存分に見せつけた。5アンダーの5位から出ると、1イーグル、7バーディ、2ボギーの「65」を叩き出し、通算12アンダーとして後続に3打差をつけて圧勝した。

3日目を終えて首位とは3打差。「追う立場の方が重圧が少ない。リーダーはもちろん一番勝利に近い位置にいるけれど、同時にプレッシャーもかかる。3打差、4打差くらい後ろにいる方が楽にプレーできる」

1年前、朴には逃した大きな魚がいた。昨年のこの大会。メジャー4連勝がかかった最終日、単独首位から出て逆転負けを喫した。「全英こそが一番残念だった試合。あの経験が今年生きた」。7番(パー5)から4連続バーディ、14番(パー5)でイーグルを奪取。鮮やかな逆転劇を完成させた。

全英初勝利の朴は、これがメジャー通算7勝目。直近14大会で6勝と他を圧倒している。既に「ANAインスピレーション」(2013年)、「KPMG女子PGA選手権」(13、14、15年)、「全米オープン」(08、13年)を制し、これで4大会のメジャーを制覇した。

男子ゴルフやテニスのように4大大会を制すれば、グランドスラム。ただし、2013年から「ザ・エビアン選手権」がメジャーに昇格しており、海外女子メジャーは現在、年間5大会ある。グランドスラムの意味を「メジャー全勝」とする考え方もあるため、昨年、朴がメジャーで3連勝し、年間グランドスラムの可能性が出てきたときには、4大会制覇なのか5大会なのかと、定義付けがなんだかややこしいことになった。

ただし、朴はエビアン選手権をメジャー昇格前年の12年に制覇しており、これで生涯グランドスラムを達成したという自負で胸を張った。「私の名前が毎年メジャーのトロフィに刻まれている。エビアンのトロフィにもある。私は女子ゴルフのすべてのメジャーで勝ったと感じています。メジャーとしてのエビアンでまた勝てればいいけれど、どの大会に行ってもチャンピオンとしての扱いを受けているわ」

現地で取材していた韓国メディアも「もちろんグランドスラムと書きますよ。確かにエビアンは当時メジャーではなかったけれど…、一番は本人が『そう感じている』と話したから」という見方だ。

ただ、そうなってくると、エビアンで2勝(09、11年)している宮里藍、メジャー公認前の84年「全英女子オープン」で勝った岡本綾子もメジャーチャンピオンって考えていいってこと?うーん…

だが、朴はそんなことは知る由もない。「私はいままでメジャーの勝利数を目標にしたことはありません。それぞれが違うタイプのコースで、違うゴルフをテストされる。ゴルファーとしてすべてのメジャーに勝って、名前を刻みたいと思っていた。これからまた、たくさんの目標を立てる。アニカ(ソレンスタム)やパティ・バーグ、レジェンドたちが成し遂げたことにトライする。伝説的な選手である彼女たちに比べたら、私はまだ赤ん坊みたいなもの」

ターンベリー、トゥルーンなど、全英会場があるスコットランドの西海岸線沿いと、海の向こうの北アイルランドには古くから「巨人伝説」が残る。

世界を支配するジャイアントは、ちいさな人間界の細かな線引きなど、ちっとも気にならないのである。(スコットランド・ターンベリー/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

2015年 全英リコー女子オープン