“タイガーの姪”シャイアン・ウッズにかかる大きな期待
オーストラリアで16日(日)に閉幕した米国女子ツアー「ISPSハンダオーストラリアン女子オープン」はカリー・ウェブが逆転で母国タイトルを手にし、地元ギャラリーの期待を一身に背負った“主役”の面目躍如を果たした。実はこの大会、開幕直前になって、そのウェブに負けず劣らずの注目を集めるようになった選手がいた。前週に同じオーストラリアで開催された欧州女子ツアーで、プロ2年目にしてツアー初優勝を挙げ、大会に乗り込んできたシャイアン・ウッズだ。
おじさん(父の異母弟)は、言わずと知れた、男子ゴルフ界で世界ナンバーワンに君臨するタイガー・ウッズ。シャイアン自身も、ウェイクフォレスト大学時代に数々の大会でアマチュアタイトルを獲得し、プロ転向後は、モデルのような容姿も相まってキャリアを築く前から多くのメディアに登場してきた。
しかし、あくまで“タイガーの姪”という、ゴルフファンなら誰もが関心を寄せる付加要素があってこその露出先行だったことは否めないだろう。自身も、前週の優勝会見で次のように述べていた。「多くの期待やプレッシャー、スポットライトを浴びる“ウッズ”のラストネームとともに成長してきましたが、プロになってからこの2年間の大部分は、人々は私を“タイガー・ウッズの姪”として見てきたと思う。でも、今週は私自身がプレーをし、試合で優勝できた。とてもエキサイティングなことだわ」。
母国の米国女子ツアーでなかったとはいえ、実績という“不足ピース”が埋め込まれた翌週、メディアやギャラリーの反応は敏感だった。練習日の火曜日には共同会見に呼ばれると、狭い会見場は記者とカメラマンで埋め尽くされ、明らかなスペース不足に陥った。プロアマ戦では多くのカメラが一挙手一投足を追い、本戦中もギャラリーが群衆となったその先にはシャイアンがいた。ツイッターのフォロワー数も大幅に増大したという。
とりわけ、米国LPGAが抱く期待は大きく膨らんだはずだ。1993年のベッツィー・キング以来20年間もアメリカ人選手が賞金女王の座に就けず、母国での人気はシニアのチャンピオンズツアー以下に低迷。ステーシー・ルイスらの頑張りで、ようやくアジア勢が隆盛を極めてきた近年の情勢に風穴を開けつつある。強力なネームバリューを持つシャイアンが、ツアーで活躍を始めれば、母国での人気回復の救世主になり得る。
しかし、その思惑が叶う可能性はしばらく先となりそうだ。シャイアンは昨年末の米国ツアーQTで上位に入れず、今季はレギュラーツアーの出場資格を保持していない。現在は欧州女子ツアーと並行して米国女子の2部ツアーを主戦場とし、まずはレギュラーツアーに昇格することを目指さなければならない。とはいえ勝利が何よりものスポットライトとなるプロの世界。「1勝」が彼女を取り巻く環境や立場を大きく変えたことは、目に見えて明らかだ。シャイアンを見守るアメリカ人たちの視線は今後一層、熱気を帯びていきそうだ。(オーストラリア・ビクトリア州/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。