野村敏京 今年の米ツアーで好調の考察
今週、オーストラリアで開催の米国女子ツアー「ISPSハンダオーストラリアン女子オープン」3日目を終えて、野村敏京が通算7アンダーの16位タイと上位争いを演じている。振り返れば、3週間前の今季開幕戦では、米ツアー自己ベストとなる23位タイフィニッシュ。昨年末のQTを19位タイで通過し、2年ぶりとなる米ツアー再挑戦のシーズン序盤で、早くも確かな存在感を示している。
昨年と比較して2つの変化がうかがえる。まずは今年、中学校2年生当時からコーチを務めているハワイ在住の叔父がトーナメント会場に帯同している点だ。日本で師事を受けていた当時も、ハワイと日本という距離が障壁となり、直接指導を受ける機会は限られていた。しかし、米ツアーフル参戦を契機にコーチも米国への移住を決断。まだ拠点こそ決まっていないが、全試合に帯同する予定だという。「海外で1人でゴハンを食べなくてもいいし、安心します」。指導面での充実にプラスして、不慣れな海外の生活面でも大きな支えになっている。
加えて日本ツアー専念となっていた昨年は、「1人でやってみたい」という野村の意向を尊重し、2人は一時的に距離を置いていた。だが、結果的にはショットの不調が響いて日本ツアーで未勝利の時期が続き、野村は再びコーチに打診。10月の「日本女子オープン」からコンビ復帰した。野村は当時とコーチ帯同の現在をこう比較する。「スイングが悪い時に迷うと、やっぱりコーチの話が大きい。安心感があります」。その言葉からは、2人の結束と信頼関係がこれまで以上に強まった印象を受けた。
そしてもう1つは、昨年の“独り立ち”に起因する。「これまでスイングが悪いと怒ってしまい、“今日はもう終わりだー!”ってなっていたけど、ミスショットをしても(冷静に)戻れるように変わりました」。昨年は耐える時期が続いたことで、自らメンタルコントロールの重要性を悟った。確信に変わったのは、昨年末の米ツアーのQTだという。「自分は変われた、ゴルフが成長したと、初めて思えました」。
この3日目も、前半はショットが暴れて停滞が続いたが、後半に2つ伸ばすナイスカムバック。「今日は(冷静になることが)良くできました。ゴルフがラクになりますね」と口調も滑らかだ。日本で得た教訓と経験を、米ツアーでも見事に生かしている。
とはいえ、今日のショットの状態については言葉も湿りがち。「今日はコーチにけっこう言われると思います・・・」と肩を落としたが、そんな表情からはなぜか悲壮感は伝わってこない。それも、現在の態勢と自分自身に、充実感を覚えているからなのだろう。(オーストラリア・ビクトリア州/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。