オーストラリアのジュニアゴルファー育成事情とは?
オーストラリアのメルボルン近郊で13日(木)、米国女子ツアー「ISPSハンダオーストラリアン女子オープン」が開幕した。日本勢は今週、米ツアープレーヤーとして上原彩子と野村敏京が出場しているほかにもう1人、日本生まれ・オーストラリア育ちの14歳アマチュアも出場している。
登録名は“Kono Matsumoto”、日本名は松本樹実(このみ)さん。プロツアー初参戦の初日は後半に崩れて5オーバーの134位と出遅れ、「悪くても2オーバーで回れたかな」と肩を落としたが、前半のアウトはイーブンパーで折り返すなど実力の片りんも垣間見せた。
樹実さんが父・栄樹さんと母・幸恵さんとオーストラリアのメルボルンに移り住んだのは8年前。それまでゴルフ経験はまったくなかったが、移住後の9歳の時にゴルフ好きの栄樹さんとプロツアーを観戦した際、会場内のイベントでジュニア用のゴルフクラブが当選したことがゴルフを始めるきっかけになった。
それからまだ4年半。「プロを目指したい」というほどゴルフにのめり込み、メキメキと上達してきた背景には、何があるのか? コース脇から愛娘のプレーを見守る樹実さんの両親にオーストラリアのジュニアゴルファー育成事情を聞いた。
父の栄樹さんがまず挙げたのが、地域のゴルフクラブを中心としたジュニア育成の土壌だ。「パブリックコースはもちろんですが、メンバーシップコースも(育成)制度が充実しているんです」。メンバーコースと聞けば親にとっては料金が気になるところだが、「年間で約500ドルほどだと思います」と何ともリーズナブル。樹実さんも実際に今週の開催コース、ザ・ビクトリアGCのジュニア会員だという。
コースの案内によると、ジュニア会員は入会金250豪ドル(約2万3000円)、年会費475豪ドル(約4万3000円)。樹実さんは学校から帰ればコースの練習場で芝の上からボールを打ち、休みの日はラウンドに時間を費やす。うらやましいほどの充実した環境でゴルフの腕を磨いている。
さらに、ゴルフクラブ間の対抗戦が頻繁に催されており、競技ゴルフの経験を数多く積めるフィールドも整えられているという。子供たちにとっては同世代のゴルファーと交流を深める場にもなっており、母の幸恵さんも「他の子供たちと一緒にゴルフするようになって、急激にゴルフが好きになっていきましたね」と目を細めた。
どうやら、こうした育成環境を好転させる原動力となっているのは、ほとんどのジュニア大会などで運営の中心的役割を担うというボランティアたちの存在だ。クラブ対抗戦に向けて合宿するときなどは、同じコースのメンバー会員による自宅提供や、車での送迎サービスが日常的に行われているらしい。「いつも申し訳ないと思うので、『今度は我々が』という感じになるんです」(栄樹さん)と、プラスの連鎖は次々とつながり、最終的にはジュニアたちに還元されていく。
韓国をはじめアジア圏からゴルフ留学に来ているジュニアたちも多い。「プロを目指すことを考えたら、ここの環境が一番いいと思いますね」と栄樹さん。樹実さんのプレーを目の当たりにしながら聞く、海外のジュニアゴルフ育成事情は、新鮮で、とても興味深かった。(オーストラリア・ビクトリア州/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。