千差万別、悪コンディションの受け止め方
強風のためにキャンセルされた「全英リコー女子オープン」2日目。アウト・イン両方からスタートしたこの日だったが、イン・スタートの第1組では、スーザン・ペターセン(ノルウェー)、クリスティ・カー、原江里菜の3選手が回っていた。
スタートしてすぐに「こんなコンディションではできない」「ティに乗せた球が動く」「風が強すぎて打った球が戻ってきた」と、原以外の2選手が執拗(しつよう)に競技委員にアピール。計6回の主張の末に、最後は唯一カップの風上に止まっていた原に球を置かせ、それが風で動いたのを見せて、ようやく彼女らの主張が受け入れられた。
その結果、途中まで行われていたプレーはすべてキャンセルとなり、明日土曜日に第2ラウンドをやり直すこととなった。宮里藍は「続行していたらアンフェアだと思うので、良い判断だったと思います」と全面的に賛同。他の選手も、ほとんどがこの判断を受容していた。
こんな状況に戸惑っていたのは、メジャー大会初挑戦の日本人選手たち。若林舞衣子は「こういうものだと思っていた」とコンディションを素直に受け止めていたし、原江里菜も同様だ。同組で猛烈に“できない”と主張する2人に、戸惑いすら感じていたという。
「私も意見をいうことはあります」という宮里藍だが、「日本は縦社会だから、下の人はなかなか言いにくいというか、言って認められるところまで来ていないと思います。上の人の立場が強いので・・・」と、国内でこういった主張をすることの難しさを指摘する。それにプラスして、気象条件の違いも挙げる。日本では雨風といってもある程度は我慢できるが、こちらのサンダーストームの場合、その規模と危険度がはるかに大きいからだ。
それぞれ、文化の違いとしか言いようがない。「だから、韓国人とか日本人が上位に来るんだなと思いました」と、我慢強さを美徳として捉える原のようなアジア人は言うし、自立して自らの意見を持つことに重きを置く欧米社会では、黙って我慢していることに別の評価をすることだろう。
そんな多様な文化を飲み込みながら、大会は日曜日に36ホールをやるべく日程が再考された。種々の意見が飛び交う中、「私は72ホールじゃなくてもいいと思っていて、それは運というか、その年のタイミングというか、たとえ54ホールだとしても後悔無いようにやるだけです」と、すべてを受け入れ、自身のやるべきことに集中するという宮里藍の心の持ちようは、やはり一段高いところにあるように感じられた。(英国ホイレイク/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka