2016年 日本女子オープン

読まれなかった手紙 チョン・インジのキングへの思い

2016/10/01 18:39
優しくて強い。チョン・インジの模範はキングにある

◇国内女子メジャー第3戦◇日本女子オープンゴルフ選手権競技 3日目(1日)◇烏山城CC 二の丸・三の丸コース(栃木県)◇6506yd(パー71)

その手紙が読まれることはなかった-。世界ランキング3位のチョン・インジ(韓国)はかねて、ゴルフ界の“キング”こと故アーノルド・パーマー氏(享年87)を敬愛していた。

何度かファンレターを送り、昨年「全米女子オープン」を制したときに初めて返信が来た。今年9月の海外メジャー「ザ・エビアン選手権」に勝利した後も、19日付で手紙が届いた。「記録的な優勝おめでとう。君は『全米女子オープン』と『ザ・エビアン選手権』の2つのメジャータイトルを獲った。成功がずっと続くように願っている」と記されていた。

チョンはすぐに返信を書いた。だが、同月25日、パーマー氏はペンシルベニア州ピッツバーグの病院で息をひきとった。「返事を読まずに亡くなったと聞きました。(返信の内容は)わたしの胸にとどめておきたい。人間としても、ゴルファーとしても尊敬していた」と静かに息を吐いた。

アーノルド・パーマーから送られた手紙。この7日後に他界した※チョン・インジのツイッターより

この日「66」とチャージをかけ、前日の43位から首位と5打差の11位に浮上した。最終18番では約80センチのパーパットを左に外したが、笑顔を絶やさなかった。クラブハウスに向かう途中、ギャラリーが差し出した手にタッチをして歩いた。「わたしは、行動でも模範的でいようと心がけているから」

「ゴルフ界だけではない。いろいろな人から好かれて、尊敬されている」と慕う、パーマー氏の振舞いを手本にする。キングのようにゴルフ界を超えて慕われる存在になりたい―。「愛し、愛されるような。わたしはうまいゴルファーではなく、いい人になりたいんです」。優しく微笑んだ。(栃木県那須烏山市/林洋平)

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