2015年 日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯

強くなったテレサ・ルー “秘密”のトレーニング法

2015/09/14 11:51
小さいのに飛距離抜群のテレサ・ルー。そのトレーニングとは?

今季の国内女子メジャー第2戦「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」を1打差で逃げ切って今季4勝目を挙げたテレサ・ルー(台湾)。日本ツアーに本格参戦したのは2011年。13年の「ミズノクラシック」で初優勝してから2年足らずで通算8勝、メジャー大会3勝と一気に強さを増してきた。秘密は? 先月、台湾に一時帰国したルーのトレーニングを垣間見る機会があったので、報告したい。

現在、ルーのトレーナーを務めるのはアラン・ファン氏(29歳)だ。10歳から11年間カナダに住み、学生時代はバスケットボールや陸上競技に取り組んだというファン氏が、ゴルフを始めたのは20歳のとき。27歳で台湾のプロテストに合格し、プロゴルファーの側面も持つ。トレーニング、フィットネス系の資格も多数ある(*文末参照)。

今オフから一緒に取り組み始めたというそのトレーニングは、いくつかのステップを踏みつつ進行し、最終的には体全体を使って効率的にパワーを発生させること、同時に筋持久力を高めることを目的として組み立てられていた。

ルーは、「このオフから彼とトレーニングをするようになって、一番変わったと思うのは精神面。集中をより持続できるようになった。トレーニングに比べたら、ゴルフ場でプレーをするのはとても楽。公園を散歩するようなもの(笑)」とその効果を語っている。

具体的には、以下のようなステップを踏んでいく。

1.筋肉をほぐすことからスタート。凝った箇所は圧迫すると痛みがある

(1)筋肉をほぐす
まずは疲労の溜まった筋肉を解きほぐすことからスタートする。結び目のついたゴムバンドをいくら伸ばしても、結び目はほどけない。最初にその結び目を解くイメージだ。ストレッチポール等を使い、筋肉を自重で圧迫する。5~10回、痛いところがあれば、さらにもう少し回数を増やす。それにより血流が良くなって、疲労物質が排出されやすくなる。

2.箱を使った3Dストレッチ。この体制で上半身をあらゆる方向に動かして、筋肉を立体的に伸ばしていく

(2)ストレッチ
続いて、筋肉の柔軟性を高めるストレッチ。特徴的なのは、3Dストレッチと呼ばれるやり方で、1方向だけではなく、立体的な動きの中で筋肉を伸ばしていく。たとえば、腰ほどの高さのある箱の上に片足を載せ、立ち足のつま先、乗せた方のつま先を一直線にして、前後左右に筋肉を伸ばしていく。ひねりやねじりも加えることで、より実践的な動きにも対応していく。ストローをくわえながらやると自然と腹式呼吸ができ、それによって肺呼吸による肩の上下動を防ぎ、肩が張ることを防ぐ効果があるという。

3.お尻の筋肉のアクティベーション。箱に飛び乗る動作で刺激していく

(3)アクティベーション
ウェイクアップコールとも呼ばれるもので、特定の筋肉に対して、「これから刺激していくよ」ということを知らせる準備動作。ゴルフスイングにおいて特に使いたいのは、お尻の筋肉だというファン氏。背中でも腰でもひざでもなく、一番大きなお尻の筋肉を有効に使えれば、地面から球へとより多くのパワーを伝えることができる。また、ティアップやカップから球を拾う際、腰や背中の筋肉でなく、意識してお尻の筋肉を使うことで怪我の予防にもつながるという。

今、バスケットボール界ではハイカットシューズから、ローカットシューズへとトレンドが変わってきている。ハイカットの利点は足首を固定して同部の怪我を予防することだったが、それにより、着地の衝撃が膝にきて、膝を悪くする選手が多くなった。お尻の筋肉を中心に、膝、足首を軟らかくして衝撃を吸収した方が、より怪我をしにくくなるという。

4-2.腕立ても不安定な要素を取り入れると体幹を鍛える効果がある

(4)トレーニング
トレーニングをする際のポイントとなるのは、特定の筋肉だけでなく、体幹と体全体を使って動作すること。たとえば、「ダンベルを右手で持ち上げる」という動きも、右腕の筋肉よりは、背筋、腹筋、胸筋、そして体幹を使って行うイメージだ。

ゆえに、トレーニングマシンは使わない。マシンを使う運動は簡単だが、役に立たない。特定の部位(筋肉)を強化するのではなく、体幹を使い、筋肉の連携を意識しながら動かしていく。片手でダンベルを持ち上げる場合、主に使うのは背中の筋肉。決して上腕筋ではない。

4-4.激しい動きを20秒、休息を10秒ずつ繰り返し、心肺機能を高めていく

スピード筋力を鍛えるためのプライオメトリック・トレーニングや、筋持久力を高めるHIIT(High-intensity interval training)と呼ばれる高強度インターバルトレーニングも導入。筋持久力が高まれば、最終18番や、ホール間のインターバルで長い坂道を上り終えた直後のティショットなどでも、パフォーマンス低下を防ぐことができる。

また、立命館大学の田畑泉教授が考案した、20秒間強い運動をして10秒間息を整えるインターバルトレーニング「タバタ式」も取り入れて、短時間で高い運動効果が得られるような指導も行っている。

・・・

もちろん、シーズン中もホテルの部屋でトレーニングは続けているというルー。だが、詳細は「秘密です」と笑う。国内女子ツアーのシーズンも佳境へと突入していく秋。ルーが賞金女王を争っていることは、決して偶然の産物ではない。

<アラン・ファン氏の持つ資格>
-NSCA(National Strength and Conditioning Association) ,CSCS(Certified Strength & Conditioning Specialist) certified strength and conditioning specialist
-T.P.I(Titlist Performance Institute) certified
- Taiwan Strength Conditioning Association / CSCP, certified strength and conditioning professional
- Taiwan Sport Coach Association / SCC , strength and conditioning coach

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

4-1.壁に向けてメディシンボールを投げつけるトレーニング
4-3.引っ張る動きと安定した体幹を鍛える動作
テレサ・ルーとアラン・ファン(右)
本邦初公開?テレサの腹筋をちらり
4.引っ張る力と押す力。両方をバランス良く鍛えていくことも大事な要素だという。

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