90位から予選通過 鈴木愛が示した1年の成長
国内女子ツアー「スタンレーレディス」2日目を90位タイで迎えた鈴木愛が、7バーディ1ボギー、この日のベストスコア「66」で巻き返し、66人をごぼう抜き。通算2アンダー24位タイで決勝ラウンド進出を決めた。
リベンジへの思いをこめた18ホールだった。昨年大会でプロデビューを果たした鈴木は、初日を「74」、2日目を「76」でまわり、通算6オーバーの83位タイで予選落ちを喫していた。あれから1年、先月「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」では宮里藍の持つ最年少優勝記録を更新する偉業を打ち立てるなど、成長著しく、追い風に乗った勢いで迎えた今週。窮地から、きっちりと雪辱を果たしてみせた。
屈辱の予選落ちから丸1年。とくに今年の夏場以降、鈴木を取り巻く環境は大きく変わった。8月の「ニトリレディス」から今週で7試合連続出場。初優勝を経てプロアマトーナメントに出場するようになってから、オフは月曜の1日だけというタイトなスケジュールを過ごしてきた。普段は「疲れた」と口にしないが、今週はツアーに帯同する母・美江さんに「2日間(月・火)休んでもいいかなぁ」と相談を持ちかけたほど。「優勝したあとで、予選落ちなんて格好悪い」という勝者のプレッシャーも抱き、相当な疲れや重圧がいま、あるに違いない。
この1年の成長を問うと、鈴木はこう答えた。「いちばんはメンタルの向上。あとはアプローチが上達したことですね」。
以前までは完璧を求めすぎるために、小さなミスが自分を苛立たせてしまうことから、さらなるミスを招く悪循環に陥りがちだった。美江さんが言うには「ゴルフを始めた小学5年生頃は、パーで上がることも許されなかったほどの負けず嫌い」。それが今では、冷静な気持ちへの切替えにより、次の発奮材料へと昇華させる術を覚えたという。
「以前の自分だったら、初日4オーバーを叩いた時点で、モチベーションが見つからないまま2日目を迎えていたかもしれない」。メジャー優勝での自信が「予選カットライン上で戦っているようではダメだと、自分の気持ちを高めることができるようになった」と勝負への執着はますます強さを増した。
どんな状況にあってもライバルは“自分”。朝早くから、暗くなるまでコースの練習場に残り、球を打ち続ける鈴木を支えているのは、20歳で身につけた強靱な精神力だった。
鈴木にとって、大ブレイクへとつなげる実りある月日となったこの1年。では、母から見たひとりの娘としてはどうだろう? 「なんにも変わりませんね(笑)。ゴルフしている以外はボーッとしているか、寝ています」。20歳の子供を見守る目で、美江さんは笑った。(静岡県裾野市/糸井順子)
■ 糸井順子(いといじゅんこ) プロフィール
某自動車メーカーに勤務後、GDOに入社。ニュースグループで約7年間、全国を飛びまわったのち、現在は社内で月金OLを謳歌中。趣味は茶道、華道、料理、ヨガ。特技は巻き髪。チャームポイントは片えくぼ。今年のモットーは、『おしとやかに、丁寧に』。