パン作りから生まれた? ツアー初優勝
趣味はパン作り?! 「meijiカップ」でツアー初優勝を挙げたナ・ダエ(韓国)の優勝会見で、女子プロゴルファーの取材ではあまり聞いたことのない“意外”な嗜好が披露された。毎週のように地方を転戦する選手たちは、DVD鑑賞や読書など、時間や場所を選ばず、手軽に持ち運べる物を趣味に選ぶことが多いのだが…。
ナ・ダエの話は、QTを通過して日本ツアーに初参戦した09年まで遡る。「最初は良い感じだった」とシーズン半ばまで上位争いに頻繁に加わっていたが、「練習をし過ぎて、左手首を痛めてしまった」と、秋口から上位への道が急速に狭まっていった。以降は予選落ちを重ね、シードも確保できず、失意の中でシーズン終了。翌2010年、2011年は試合出場もままならず、不遇の時を過ごした。
ゴルフ場を遠く感じる日々の中、「生地を練るのが、手首にいいと思った」と、日常生活で手首のリハビリとして着目したのがパン作りだった。通訳担当者からオーブンを借り、千葉県に借りている自宅でせっせと生地を練り、汗を流したという。そんな作業もいつしかリハビリ目的を超えて楽しみとなり、「それからずっと、お菓子作りに夢中です」。ツアー参戦中でも、暇をみつけてはパンとお菓子作りに精を出し、ツアー関係者などに配っている。残念ながらまだ食べたことはないが、「クッキーとマフィンが、本当に美味しいんです」と通訳さんも絶賛する腕前は相当なようだ。
12年から本格的にツアー復帰後、ついに手にした悲願の初優勝。確かに、手首のケガさえなければ、歓喜の時はもっと早く迎えられていたかもしれない。「けっこう長かったです」と5年の歳月を振り返る言葉からも、そんな感情が伝わってくる。
手首の状態は、並行して行っているトレーニングの効果もあり、もう全くプレーに問題ないという。実際のところ、パン作りのリハビリ効果は “?”だが、心のリハビリにはなったかもしれない。お菓子メーカーがスポンサーの「meijiカップ」で優勝したのも、何かの因果かな?(北海道北広島市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。