勝者への憧れ 堀奈津佳と松山英樹の出会い
国内女子ツアー「アース・モンダミンカップ」で今季2勝目を飾った堀奈津佳。ツアー最少ストローク数を更新する通算21アンダー、267ストローク。さらに4日間全てで60台をマークしての優勝はツアー史上初と、歴史的勝利で女子ゴルフ界にその名を刻んだ。
「常に優勝を目指している」という堀が、初めて“優勝”という2文字を意識したのが、2003年に小学校5年生当時に出場した「四国ジュニアゴルフ選手権」だった。ゴルフを始めてから1年が経ち、「ちょっと出てみようかな」という気持ちで初めて出場した競技ゴルフ。堀がエントリーした“小学生オープンの部”は男女混合で行われ、なんと同組には1歳上の松山英樹がいたという。
当時から松山の名前は知れ渡っており、「すごく緊張しました。なんで私が・・・という感じ」と回顧する。「確か松山さんは70台後半だったけど、私は140ぐらい。すごく迷惑をかけちゃいました」と、松山と対照的に結果は散々だった。その松山は、前評判通りのプレーを見せて優勝。「羨ましかった。“優勝っていいなあ”と思いました」。勝利というものに憧れを抱いた、最初の瞬間だった。
以降は「そこから練習をすごくして、ゴルフがどんどん好きになった」という堀。翌年度の同競技では「100前後くらいまでになった」というから、当時の努力の跡が窺える。その時から交流が始まったという松山とは、今も連絡を取り合う仲。「精神的にも、いつもすごいと思っている」と、今や男子プロツアーで賞金ランクを独走する松山の背中を、憧れの目で長く見つめてきた。
初めて出場して大叩きをした時から10年後。歴史的圧勝を遂げた今の姿を、小学生当時の堀自身は想像していただろうか。今、目標に掲げるプロは、江連忠ゴルフアカデミーで志を共にしてきた上田桃子と諸見里しのぶ。「常に憧れの人を追いかけて、ここまでたどり着くことができた。私も、夢を与えられるプロになりたいと思っています」と語った。
最近ではトーナメント会場で、堀が契約するサマンサタバサのウエアを来た子供たちが応援してくれる姿も見るという。「(身体が)小さくても頑張れる、という夢を与えられれば良いですね」。この日の堀のプレーは紛れもなく、プロを夢見るジュニアたちが“憧れ”として見つめる姿の、それだった。(千葉県袖ヶ浦市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。