森田も学ぶ、茂木が築いたプレースタイル
「この1年は夢にも出ていた」とまで切望していた、メジャー初タイトル。先月36歳の誕生日を迎えた茂木宏美が、2打差を追って同じ最終組からスタートした森田理香子を逆転し、「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」で悲願を遂げた。
近年、目覚ましい台頭を見せる若手たちの出現。ドライバーの飛距離は「235ヤードぐらい」という茂木が、急速に増えつつあるロングヒッターたちとメジャーで渡り合うには何を磨くべきか。「いかにミスを少なくしてバーディを獲り、アンダーに繋げていくことを、ずっと考えていた」。その柱となったのは、100ヤード以内のショットの精度と、ショートゲームの向上だ。若手ロングヒッターの代表格である森田に対抗するには、「私のゴルフをしないと、絶対に勝てない」。そしてこの最終日は、2人の“差”が明確に現れる展開となった。
前半5番のパー5。2オンを狙った森田のボールはグリーン手前バンカーに捕まり、寄せきれずにパーどまり。対して茂木は、2打目で「得意な距離」という残り70ヤード地点に確実に刻み、3メートルを入れてバーディ。この時点で森田を捕らえ、早々に首位に並び流れを築いた。
さらに続く6番パー3では、互いにティショットでグリーンを外してアプローチを残す。左ラフに外した森田は3打目を5メートルショートさせて、バーディより先にボギーが先行。一方の茂木は手前花道から10ヤードのアプローチをピンに絡め、危なげなくパーを収めた。
茂木は8番(パー3)でティショットをグリーン右に大きく外し、アプローチはカップを4メートルオーバー。しかし、これをジャストタッチでねじ込みピンチを脱出。「もしかしたら、私に勝利の女神が向いているかもしれないと思って、気が引き締まった」。ミスを連鎖させない粘り強いショートゲームは、茂木がメジャー獲りのために突き詰めていたプレースタイルのそれだった。
最終的に3打差をつけられた森田がまず口にしたのは、茂木のプレーへの称賛の言葉。「無理をせずにバーディが狙えるところにショットを置いて、パットを入れる。攻めばかりではなくて、守りもある。間近で見ていて、自分もああできれば大きくブレることがないんだな、って勉強になりました」。
飛距離への欲望は、過去に抱いたことはある。しかし、堅実さを持ち味とする本分を崩すことなく、「その時間があるなら、正確性を磨こう」というプレースタイルに徹し切れたからこそ、今がある。そのストーリーを明確に示してくれた、森田との優勝争いだった。(茨城県つくばみらい市/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。