2014年 フジサンケイクラシック

シャイで寡黙?11年目の初優勝 岩田寛の等身大にズームイン

2014/09/09 07:00
ギャラリーとハイタッチを交わす岩田寛。これでもきっと、めいっぱいの笑顔なんです

「あまり人前で話すのが得意じゃないので感謝の言葉をうまく伝えられるか分かりませんが・・・このスピーチが皆さんの心に届いてくれたらいいと思っています」

感情をあまり表に出さず、取材に答える声はか細くて、言葉数も多い方ではない。「フジサンケイクラシック」でツアー初優勝を飾ったプロ11年目、岩田寛の優勝インタビューは、いつも通り飾り気はないけれど、少ない言葉で何とか気持ちを伝えようとする、いかにも彼らしいものだった。

優勝会見の第一声は「意外にフツーでしたね」。初めてのウィニングボールも、ボランティアのマーカーにあげたという。寡黙で木訥、何ごとにもクールに構えている感のある岩田だが、岩田に近い人たちの声を聞いてみると、その印象が少し変わってくる。

2008年からキャディを務める新岡隆三郎さんが「シャイなので人前だとああなるけど、本当はぜんぜん違う。しゃべると面白いし、他では冗談しか言いませんから」と笑えば、東北福祉大の後輩、正岡竜二は「人見知りだけど、仲良くなると弾けちゃう感じですね」と口をそろえる。岩田を知る他の人たちからも同じ声をよく聞き、特にお酒が入ると、さらなるチャージがかかるとのことだ。

胸の内には、海外挑戦への熱い思いも秘めている。今年度末には2008年、13年に続いて3回目となる米国ツアーのQTへの出場を予定する。昨年からは下部のウェブドットコムツアー出場権だけを争う規定に変わり、PGAツアーへの道はより困難なものとなったが、33歳は再び海を渡ることを決めた。

「(米国は)世界で一番レベルが高いところだと思っているからですかね。そこに行かないと分からないこともあるのかな、と」

賞金ランクは2位に浮上し、9月17日時点で5位以内に入っていればファイナルQT(12月11~16日/フロリダ州・パームビーチガーデン)から参戦できる条件をクリアする。2016年シーズンまでの国内シード権も手にし、心置きなく米国へと旅立てる。

周囲を取り巻く状況はしばらく騒々しいものになりそうだが、当の本人は至って涼しげだ。

「何も変わりたくはないです。今までやってきたことを、明日からまたいつも通りやるだけです」

プレースタイルも、シャイな性格も、これまで通り。等身大の自分のまま、ようやく足をかけたスター街道を気取らずに歩んでいく。(山梨県富士河口湖町/塚田達也)

■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール

1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。

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