2014年 つるやオープンゴルフトーナメント

重永亜斗夢「十万馬力」が出ない理由

2014/04/25 20:21
片山と並ぶ首位に浮上した重永。昨年QTをトップ通過した彼の苦しみとは

「ほっそいなあ~」。背中越しに聞こえたギャラリーのつぶやきに、胸に突き刺さる思いがした。そんなの俺だって分かってる。でも・・・

兵庫県の山の原ゴルフクラブ 山の原コースで開催中の国内男子ツアー「つるやオープンゴルフトーナメント」2日目。重永亜斗夢が5バーディ、ノーボギーの「66」(パー71)をマークして、片山晋呉と並び通算8アンダーの首位で決勝ラウンドに進んだ。

昨年度の最終予選会をトップで通過した25歳は、この日3アンダーの8位でスタート。インから出て3つのパー5をすべてバーディとすると、最終9番では残り206ヤードの第2打で、強い左足下がりのライから6番アイアンを強振。ボールはグリーン手前のラフを滑りあがり、最後は4メートルの軽いスライスラインを沈めてバーディフィニッシュを決めた。

花粉症に悩まされ前週の「東建ホームメイトカップ」はマスク姿でプレー。「先週は松だったけど、今週は杉だから」と一難は去った様子だが、本来、重永が抱える悩みはそれではない。

国が難病指定している潰瘍性大腸炎に苦しんでおり、先輩プロの細川和彦はもとより、安倍晋三首相らと同じ薬を服用する毎日。この日も「すごく喉が渇いて水を飲んだらお腹が…」とトイレに駆け込みそうになった。プレー前も十分に食事を摂れないツアー生活。身長170センチだが、トレーニングを重ねても、体重計の針は60キロの目盛を行ったり来たりしている。

QT1位の勲章を得て、今季新たにキャロウェイゴルフと用具契約を結んだ。「最低でもシード獲得が目標。正直言って、地元(熊本)での期待も感じているし、周囲からの重圧もある。去年までとは全然違う」と、今まで以上に胃が痛くなりそうな状況になったという思いはある。その反面、周囲がすぐに覚えてくれる「亜斗夢」の名前について「今年はそれ(アトムキャラ)で売っていこうと思うんです」とプロ根性も養われたところ。今週はキャディが用意してくれた鉄腕アトムのコインがマーカーだ。

昨シーズンは決勝ラウンドに進んだ8試合で、予選通過時よりも順位を上げたのは2試合に留まった。「僕はここからなんです。だいたい3日目、4日目とスコアを落としてしまうから」とまずは土曜日のプレーを見据えた。空を目がけ、アトムがたくましく拳を突き上げる日は訪れるか。(兵庫県川西市/桂川洋一)

■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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