宮里優作、試練乗り越えツアー初優勝を狙う
「コカ・コーラ東海クラシック」の予選ラウンドで、ツアー12年目にして初めて2日間首位をキープした宮里優作。しかし3日目は「72」とスコアを伸ばせず、通算4アンダーをキープするにとどまり、首位の座を譲った武藤俊憲に2打差の2位タイに後退した。
スタートから5ホール、パーを並べた宮里に試練が訪れたのは、6番のサードショット時。グリーン手前から残り60ヤードをウェッジで打とうとした瞬間、背後で大きな音が鳴り響いた。その瞬間「あっ」と声を上げてクラブから手を離すと同時に、ボールはライナーでグリーンの奥まで飛んでしまった。
とっさに音の方向に目をやると、同伴競技者の呉阿順(中国)が、斜面でクラブを持って頭を下げていた。呉は打順を待つ間に素振りをして際、誤って落ちていた木の枝を打ってしまったのだ。前日「自分のことで精一杯で、周囲のことは気にならない」と話していた宮里だが、さすがにインパクト直前のモノ音は気にならないはずがなかった。「おい!」と怒りの声を張り上げ、サングラス越しに呉の方を向いたまま、しばらく動けずにいた。
しかしこの日は精神面での強さが光った。その後のプレーには、トラブルを引きずる様子を微塵も感じさせなかった。気を取り直して、奥からのアプローチをしっかりと寄せてナイスボギーで切り抜けると、グリーン上でひたすら頭を下げる呉とキャディに「気にしなくていいよ」と笑顔で声をかけた宮里。続く7番(パー5)でバーディを奪うと、9番では下り3メートルのバーディパットを決めてスコアを伸ばした。
後半も耐えるゴルフが続き、16番、17番で連続ボギー。この時点で3アンダーまで後退し、失速ムードになりかけた。しかし、最終18番は左ラフから残り180ヤードの第2打で、フライヤーを計算し、9番アイアンをフルスイング。「グリーンのエッジに落ちてくれれば、ピンに寄ると思いました」と、狙い通りにボールはカップに向かって転がり手前3メートルに。多くのギャラリーが取り囲むグリーンで、バーディパットを決めた宮里は何度も右手を握りしめて気合いの入った表情を続けた。
土壇場で再び4アンダーに戻し、最終日に最終組でラウンドすることが決定。「最後のバーディは大きいですね。明日につながります」と、ラウンド直後は興奮が収まらなかった。
逆転優勝に向けて「この難しいコースで2打差はきついですね」と話す宮里だが、「この3日間、自分のプレーに集中してここまで来られた。明日は優勝を意識して、攻めるところは攻めて、気持ちは前に向く感じでいきたいと思います」と、優勝を狙って戦うことを誓った。
プロ転向直後から、ファンの期待に応えられずツアー優勝を掴むことができない天才肌。ショットの精度はツアーでも折り紙つきの腕前ながら、精神面での弱さを指摘されることもあった。しかし今回は、これまでとは気合いの入り方が違う様子なのだ。(愛知県みよし市/本橋英治)