3打差逆転は? 藤田寛之のパット練習ドリル
山梨県の富士桜カントリー倶楽部で開催中の国内男子ツアー「フジサンケイクラシック」は3日目を終えてプラヤド・マークセン(タイ)が通算8アンダーで単独首位。2打差の2位タイに岩田寛とキム・ヒョンソン(韓国)がつける中、この日のベストスコアタイ「67」をマークした藤田寛之が通算5アンダーの4位タイに浮上してきた。
ムービングデーのラウンドの締めくくりは鮮やかだった。15番までに4つのバーディ(1ボギー)を奪ってスコアを伸ばした藤田は、最終18番で第2打をグリーン右手前の深いバンカーに入れた。続く3打目。砲台気味のグリーンのピンの根元は見えない。さらに「左足下がりが少し入っていて、スピンがかかりにくい。1ピンオーバーでも仕方が無い」という状況だった。しかしロフト58.5度、バウンス8度のウェッジでのショットが最高の結果を生む。ピン手前に1メートルに落ちたボールはそのままカップへ。割れるような大歓声で藤田はチップインバーディを知った。
最終日を前にトップとは3打差。「いいムードではあるなと思う」と今季3勝目へ好位置につけた。夏場の海外メジャーを戦った直後はショットの調子を崩していたが、今大会直前に先生役として参加したジュニアレッスン会でヒントを得た。テニスラケットによる練習法を伝授すると、自らも“面”とスイングプレーンを意識したショットを思い起こし、好感触をつかんだ。「このコースはそんなにビッグスコアが出るコースではないが、今日のようにアンダーパーを出せるゴルフをしていれば優勝争いに食い込めるのでは。追いかける立場はやりやすい」と逆転に自信ものぞかせる。
ところで藤田は、8月の「全米プロゴルフ選手権」で、世界の他選手の様子を眺めながら、自分に新たな練習ドリルを課した。「パッティングの基本」というショートパット。ラウンド後に黙々とグリーンでボールを転がしている。
屈指のショートゲーム巧者の目下のドリルはこう。カップから1メートル強の位置からパットする前に、そのライン上にティペグを2本刺す。間隔はボール一個分より少し広く。ボールをこの2本のティの間を通過させ、カップに収めていく。最初はストロークした直後にパターのフェースがティに当たるくらい近くから。2本に同時に当てることでフェース面がラインに対して垂直に向いているか確認する。その後、パットの距離を伸ばしていくが最長でも1.5メートルほどまで。これを数十球繰り返す。
仕上げは1つのカップの周りに、梅原敦キャディが円を描くようにボールを置いていき、これを沈めていく練習。距離は1メートル強と変わらないが、ティは外し、フック、スライスと様々なラインから9個連続で決めるまで終われない。外せば一からやり直し。この日は17回目のトライでようやくフィニッシュした。最後の1球は、顔の前にシャフトを立てて傾斜を確認し、ボールとカップに向かって正対してスッ、スッと2度素振りをする、普段の試合中のルーティンまで飛び出すほど。「なかなか終われなかった」と苦笑いでロッカールームに引き上げていった。
ところで、この練習前に2本のティをグリーンに刺してセッティングするのは梅原キャディの役目。「真っ直ぐなラインを探すのがなかなか難しいんですよ」と、準備段階から神経を使うそう。真似をする際には、まずはご注意あれ。(山梨県富士河口湖町/桂川洋一)