天国と地獄 シード権を巡る争いが激化
国内男子ツアーは前週、11月の第1週がオープンウィーク。2週間ぶりのトーナメントとなった「三井住友VISA太平洋マスターズ」は、迫りくる冬の気配を存分に感じさせている。富士山のふもと、御殿場の気候も相まって、選手たちの吐く息は白く、ロープ外にはダウンジャケットを着込む数多くのギャラリーの姿。「寒さとの戦い」と口にする選手も日を追うごとに増えてきた。今シーズンも残り4試合。シード権争いも、いよいよカウントダウンに入った。
初日トップに立った鈴木亨は今季まで、現役のシード選手としては最も長い18年連続で賞金シード権を確保。しかしこの2011年は現在、賞金ランク上位70位のボーダーラインには遠く、苦しい状況が続いている。
2009年の「マイナビABCチャンピオンシップ」でツアー通算8勝目をマークしたが、今季は首痛のため春先から本調子には遠く及ばない状態が続いていた。夏場に入るとさらに痛みが増し、8月に再検査を受けると首のヘルニアと診断された。肩に力が入らず、腕立て伏せすらままならない。9月の「フジサンケイクラシック」から一度も予選を通過できないまま、今週を戦っている。仮に今シーズンを終えて上位70位を逃しても、来季は「生涯獲得賞金25位以内」の特別枠を使ってツアーに参戦する意向だが「目の前のことだけに集中していく」と悲壮感すら漂う。
鈴木に1打差の2位タイでスタートした谷昭範は昨シーズン末に、初めてシード権を獲得。しかし今季はここまでランキング77位。左ひじ痛に苦しむ1年を経験しながら「いけるところまでいきたい。目標をトップ10といったように定めてしまうとダメなので」と先を見据えている。さらに1打差の4アンダー5位タイにはベテランの篠崎紀夫。ランキングは81位。「残りはわずかなので、やれることをやりたい。お尻に火がついている。とりあえず上を目指すしかない」。
最終戦の「日本シリーズJTカップ」はその年の優勝者と国内賞金ランキング25位以内という“エリート”選手だけが集う場。シード権を争う選手たちの最後の戦いの舞台はその前週の「カシオワールドオープン」となる。華やかな優勝、賞金王争いの裏で、選手に気軽に話しかけるのにも普段の何倍も気を遣う、そんな季節がやってきてしまった。(静岡県御殿場市/桂川洋一)
■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw