欧州ツアーで実施 6ホールのゴルフは不完全か?
◇欧州、アジア、豪州共催◇ISPSハンダ ワールドスーパー6パース◇レイクカリーニャップCC(オーストラリア)◇7143yd(パー72)
3日目までに54ホールのストロークプレーを行い、上位24選手が最終日6ホールのマッチプレーでタイトルを争う。72ホールのストローク戦からフォーマットを変更した欧州ツアーの公式競技「ISPSハンダ ワールドスーパー6パース」は今年で2回目の開催を終えた。マッチプレーでいえば、1つのゲームが“通常の3分の1”で完了する方式は、勝敗が流れや運に委ねられる部分が大きかったが、ギャラリーからは好意的な意見も少なくなかった。
優勝したキラデク・アフィバーンラト(タイ)はストローク戦を終えた時点では17位タイ。直後に行われたプレーオフで生き残り、24番目の枠で最終日に滑り込んでタイトルをさらった。トーナメント形式のマッチプレー戦では、前日までのストローク差が“帳消し”になった利点があったことを認めつつ、6ホールマッチのコツを問われると「短いからとにかく先手必勝。流れをつかむためにね。最初のホールをいかにして攻めるか、だけを考えていた」と語った。
小平智は1回戦で19歳のアマチュア、ミンウー・リー(オーストラリア)に3&1で敗れた。相手の力を「上手かったし、良いゴルフをしていた」と素直に認めながら「運の要素もあると思う。勢いが大事」と述べた。リーは試合後、小平戦の自身のプレーを「神がかっていた」と表現。リーは2回戦でプロム・ミーサワット(タイ)も撃破したが、格上選手との戦いがそれぞれ「6ホールで良かった」というのも本音だっただろう。
勝敗とは別の部分で、6ホールマッチならではの問題点も見えた。3位決定戦も含めた全24マッチのうち、9マッチで正規の6ホールで決着がつかなかった。サドンデス形式の延長戦は、2ホール目以降もすべて同じホールで行われたため、後続の組の待ち時間はおのずと長くなった。2回戦でぶつかった宮里優作とアフィバーンラトは前の組のマッチ終了を20分近く待つことになった。
必ずしもポジティブな側面ばかりではない試合形式だったが、観客の反応はどうだったか。小平のマッチを観戦したパース在住の40代の日本人女性は「ハラハラ感がすごくあった。時間がかかり過ぎないから、全部見られるのはうれしい」と言った。
通常のストロークプレーでは3サムで18ホールを回ると、5時間近くかかることがある。一方、2サムのマッチプレーにかかる時間は18ホールで4時間に満たず、6ホールであれば単純計算で3分の1、つまり1時間そこそこで終わる。そもそもゴルフ観戦で1組について18ホールを歩くファンは相当コアかもしれない。「(小平は)負けちゃったけど、最初から最後まで1試合しっかり見られた感じで良かった。2回戦にいっていたら?もちろん見に行った。少し休みが入るし」と女性は話す。
大会はマッチプレーで最終6ホール目をクラブハウスに近い正規の18番に設定。同ホールを中心にして、ギャラリーの移動距離が少ないように使用ホール(10番、11番、13番、14番、12番、18番の順)を選んだ。サドンデスで組が詰まるのも、BGMが流れ、ビール片手に観戦ができるテラス席が設けられた18番ホールに注目を集めるという狙いがあったからこそだ。
同じくパース在住の40代の日本人男性からは「サッカーのPK戦を見ているみたい。1ホールでも先に落とすと焦りがでるから、こっちも祈るような気持ちで見る。スポーツを観戦しているって感じ。ただ6ホールは少し短いので、やっぱり9ホールくらいはやって欲しい」という意見も聞かれた。
18ホールや72ホールの流れの中でドラマが生まれるのはゴルフの醍醐味である。大会自体に改善ポイントも多くありそうだが、日本人ギャラリーが一喜一憂しながらゴルフ観戦を楽しんでいたのも確かだった。(オーストラリア・パース/林洋平)