ショットクロック導入でどうなった? 欧州ツアーの新機軸に注目
国内ゴルフ界の話題が、韓国から来たセクシー女子プロに席巻された先週。欧州ツアーでは「ゴルフシックス」と呼ばれる2日間の新規イベントが開催された。斬新なアイデア満載だった実験的な大会は、世界ランキングにも賞金ランキングにも反映されず、日本での報道も大きくはなかった。だが、今後のゴルフ界には大きなインパクトを残した可能性があるので、ここで改めて紹介しておきたい。
国別対抗戦の形をとり、出場したのは各チーム2人ずつの16カ国32人。大会フォーマットは、若者が慣れ親しむサッカー(欧州チャンピオンズリーグなど)が多分に意識されていて、グループリーグは4組(各4チーム)に分かれた総当たり戦。各グループの上位2チームが決勝トーナメントに進出できる。
各試合は6ホールのマッチプレー(ティショットは4人全員が打ち、チームで良い球を選択して以降は交互に打つグリーンサム方式)で争われた。通常のマッチプレーと違うのは、ホールを獲ったチームが1ポイントを獲得し、勝敗が決した後も全試合6ホールまで行われたこと。試合は(サッカーのように)3-1や、2-0のようなスコアとなり、勝ち点同数で複数チームが並んだ場合に、このポイントがサッカーの得失点差のように機能して決勝トーナメント進出チームを決定した。
6ホールは、それぞれに趣向が凝らされていたのだが、最も注目を集めたのは“ショットクロック”と呼ばれるタイマーが設置された4番ホールだった。ティショットから、セカンドショット、アプローチからパターに至るまで、選手たちは初日の2戦目までは1打40秒以内、それ以降の試合では1打30秒以内で打つことを要求された。タイムオーバーとなると1罰打。タイマーは選手たちに付いて移動し、ギャラリーには、タイマーが残り10秒になると一緒にカウントダウンすることが奨励されていた。
⏱ Shot clock
— DP World Tour (@DPWorldTour) 2017年5月6日
No problem for @AndySulliGolf at #GolfSixes pic.twitter.com/dGfRsrpJMf
スロープレーが問題視される近年のゴルフ界において、こんなにエンターテイメント要素を付加して問題解決を果たした事例を他に知らない。大会を通じて唯一この罰打を受けたアメリカ代表のポール・ピーターソンも、自身のツイッターで「全競技者へ告ぐ。4番ホールにはショットクロックがあるから注意!」と好意的にコメントしたほどだ。この4番のおかげもあってか、各マッチは1時間前後で決着した。
選手たちは花火と音楽、アナウンサーによる派手な紹介で登場した。国別対抗戦ということもあって、ギャラリーたちは感情のままに、思う存分に声を張り上げた。2日間で1万人近いギャラリーが訪れて、第1回大会は多くの示唆に富む成功を残したといえそうだ。
ルールも含め、いまゴルフ界は変革の時期に差し掛かっている。米国男子ツアーも今季からペア戦を復活させたばかりだ。“ショットクロック”ならば、国内トーナメントで導入することも可能だろう。普段は静けさに包まれたゴルフ場でも、ときにブーイングや喝采があってもいい。日本でも、こうした斬新な取り組みが増えることに期待したい。(編集部/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka