プロ転向から1年半 “セベの息子”の今
モロッコで開幕した「ハッサンIIトロフィー」初日の午後5時過ぎ。人影もまばらになった打撃練習場に、ボールを打ち込む選手の姿があった。初日に「77」と崩し、5オーバー108位と出遅れた25歳のハビエル・バレステロス。世界の主要ツアーで通算87勝(メジャー5勝)を挙げ、5年前に死去したセベ・バレステロス氏の長男である。
世界中のメディアが大々的に報じた2014年11月のプロ転向から1年半。今は欧州の下部ツアーを主戦場にし、レギュラーツアーへの定着を目指して下積みのときを過ごしている。表舞台から遠のくにつれて、関心も薄れつつあるのか。推薦による今季初のレギュラーツアー参戦にも関わらず、メディアの扱いは決して大きなものではない。そして、やはりと言うべきか。今もほとんどのケースで、名前の前後には次の言葉が伴う。“son of Seve(セベの息子)”。
ありきたりな疑問ではあるけれど、世界的に名の知れた父を持つ二世ゴルファーの心中はどのようなものだろう。「やっぱりそういう質問は避けられないよね…。これまで何回もされてきたよ」。苦笑いを浮かべながらも、これまで辟易してきたであろう問いに丁寧に応じてくれた。
「父は確かに偉大だったけど、僕が父になれるわけがない。自分は自分なんだ。これまで重圧に感じることもなかったし、自分のゴルフで上を目指すだけだと思っているよ」
ロールモデルとする選手は?「もちろん、父もそうだけど」と前置きした上で「より若いロリー・マキロイやリッキー・ファウラー。セルヒオ・ガルシアもそう。彼らを目指して頑張っているんだ」。見据える先には、現在の男子ゴルフ界をリードする同世代、同郷の先輩たちの背中がある。
「きょうはなかなか良いゴルフができていたし、全体的に調子は悪くないと思う。ただ、パットが散々だったね…」。どこか父の面影を感じる笑顔を残し、足早にパッティンググリーンへと歩を進めた。(モロッコ・ラバト/塚田達也)
■ 塚田達也(つかだたつや) プロフィール
1977年生まれ。工事現場の監督から紆余曲折を経て現在に至る。35歳を過ぎてダイエットが欠かせなくなった変化を自覚しつつ、出張が重なると誘惑に負ける日々を繰り返している小さいおっさんです。