コースの一部を住宅用地に転換へ 香港GCの未来
◇アジアンツアー◇香港オープン 最終日◇香港GC(香港)◇6701yd(パー70)
その動きは迅速だった。当初、昨年11月に開催予定だった「香港オープン」は、反政府抗議行動激化のために、開幕前週にやむなく延期が決定された。香港最古のプロスポーツイベントとして毎年実施され、これで61回目。「とても重要な大会なので、すぐに新しい日程を探しました」と、香港GC広報のアレックス・ジェンキンス氏は力説する。
夏は暑過ぎるし、台風の懸念もある。今年は2月に「香港女子オープン」、10月には「世界アマチュアゴルフチーム選手権」が2週間にわたって開催される。11月には第62回「香港オープン」も控えているが、歴史を継ぐことは重要だった。過密スケジュールの合間を縫って、当初予定から6週間後の1月初旬の1週間を確保した。
懸念されていた抗議活動も、この時期はほぼ皆無だった。到着した火曜日に、セントラルのオフィス街で小規模な集まりを目撃したが、それはいたって平和的なもの。1週間を通して、街に不穏な空気は微塵もなかった。
それでも、香港の置かれている状況とリンクするように、香港GCも変化の波にさらされている。現在、粉嶺(ファンリン)地区に3コース計54ホールを有している同クラブだが、2020年8月に香港政府との土地リースの契約が切れることを受け、政府は1911年開場のオールドコース8ホールを含む一部の土地(32ヘクタール)を、住宅用地に転換する計画を立てている。世界屈指レベルに高騰する住宅価格への対応を迫られてのことだ。ただし、3年の移行期間が設定されており、着工は2024年予定。それまでに、周辺環境だけでなく、社会全体への影響も慎重に考慮していくという。
同クラブメンバーは香港のエリート層を代表していると言われており、一部富裕層のために広い土地が使われているという意見は、庶民感情を刺激しやすい。ただし、「全ラウンドの50%はゲストによるもの」だとジェンキンス氏は言う。それだけでなく、ジュニアゴルファーの招待や、ナショナルチームの強化、そして年に1度の「香港オープン」という世界規模の大会の舞台となることで、多くを香港社会に還元している側面も見逃せない。
もし、一部のコースを返還しても、「香港オープン」をホストすることは可能なのか?「これまでよりチャレンジングになることは確かだけど、それでもまだ36ホール以上ある」とジェンキンス氏。変化を続ける香港を象徴するように、コースも大会も同じようにサバイバルを求められている。(中国・香港/今岡涼太)
■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール
1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka