フロム・センダイ(前編) 松山英樹とゆかりの地を歩く
住民票のある街
愛媛で生まれ、中高時代を高知・明徳義塾で過ごした松山英樹は当時、卒業後のプロ転向を断念し、東北福祉大に進学した。在学中の2011年4月に「マスターズ」でローアマチュアを獲得し、日本ツアーでも優勝。鳴り物入りで飛び込んだ13年には賞金王になった。翌年には主戦場を米国に移し、現在までにPGAツアーで5勝。世界のトッププロのひとりになって久しいが、今も多くの試合のティオフ時には、こう紹介アナウンスがある。
“From SENDAI JAPAN, Hideki Matsuyama”―――
拠点は米国・フロリダ州オーランドに置いている。それでも松山はいまだに国内の住民票を仙台市に預け、年に数回はここに帰る。2018年冬、松山ゆかりの地を訪ねた。
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坂の上のトレーニング室
頬をなでる冷たい風が心地いい。12月の空には雪が舞い始めた。東北福祉大のメインキャンパスは東北の中心街から北西の青葉区に位置する。仙台駅から車で約15分の距離にあるが、朝の通勤ラッシュ時は交通渋滞が激しい。ゴルフ部をはじめ運動部の学生寮や練習施設の多くは、さらに北西の「国見ケ丘」という土地にある。その名の通り、いくつかの坂を上った先にあり、市街地より気温が低いのがすぐに分かる。沿道に残る雪も多い。
敷地にひっそりと佇む天井の高いプレハブ小屋は、ゴルフ部のトレーニングルームだ。決して広くはない室内に所狭しとマシンが並ぶ。凍えながらウォーミングアップを始めた松山の身体はいつの間にか熱を帯び、冷気と相まって首元から湯気が上がっていた。
「トレーニングは寒いところでするのが好きなんです。暑いと汗だくになって、のぼせてしまう。寒いとそれがないから、もう一回できるでしょ。短時間で集中してやるのが苦手なんです。仙台は夏も真冬も好き。雪がすごいときもあるけど、オレは好きだなあ」
現役のゴルフ部員は授業中。彼らがまだ来ない午前中のことだった。
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■ 桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw