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ゴルフに目覚め始めたエストニア美女たち

2018/07/17 14:40
初めてコースに来たという22歳の二人組。私服で来られる気軽さが素晴らしい

バルト海の東端、フィンランド湾を往復する大型フェリーは2時間でフィンランドの首都ヘルシンキと、エストニアの首都タリンを結ぶ。1991年のソビエト連邦崩壊後に独立を回復したエストニアでは、いまゴルフクラブを握り始める若者たちが増えている。

人口約130万人(日本の約100分の1)、国土4.5万平方キロ(同約9分の1)のエストニアに、現在ゴルフ場は9つある。ソ連の支配下にあった時代、ゴルフは資本主義的スポーツとして禁止されていた。同国に初めてゴルフ場ができたのは、1993年のことだ。

エストニア最古のゴルフ場であるニートバリアGCは、世界遺産に指定されているタリン旧市街から静かな森林地帯を抜けて、車で約20分のところにある。広大な敷地に、木々によってセパレートされた戦略的な18ホールと、初心者向けのパー20の5ホール、芝から打てる練習場、複数のアプローチ・パッティングエリア、モダンなクラブハウスという充実した設備を誇る。

ゴルフ場に一歩足を踏み入れると、女性や若者の多いことに驚かされた。訪れた日は土曜日だったが、ゴルフを始めたばかりと思われる20代の若者たちの姿も多く、その半数は女性だった。タンクトップやミニスカート、タイトなワンピースといったスタイリッシュな服装が目を引くが、現地では「ゴルフウエアはかっこいい」というイメージも定着しつつあるという。

こんなスタイリッシュなゴルファーばかり。確かにかっこいい

練習場で出会った22歳の女性2人は、初めてコースに来たという。ゴルフはやったことも教わったこともないが、「やってみたい」と思い立った。ここでは、初心者用のクラブを借りて、1カゴ25球のボールを買っても2、3ユーロしかしない。ゴルフウエアではなく、私服のワンピースや足元のパンプスが、その気軽さを物語っている。

独立直後は経済状態も思わしくなく、最近になってようやく人々の暮らしに余裕が出始めたのが、若者たちがゴルフに興味を持ち始めた理由の1つ。自然を愛する国民性も、ゴルフというスポーツにマッチしているようだ。

だが、なにもせずに新しいゴルファーが増えるわけではない。ニートバリアGCのチェアマンであるアイバル・リーミッツ氏は、緻密な戦略でゴルファー増へと導いている。

「練習するところがないと、ゴルフを始めることができない」という発想のもと、練習場や初心者向けコースに投資をするのは第一歩。毎週末に開催されている初心者向けの3日間プログラムは、最初の2日で4時間ずつのレッスンを行って、3日目は1.5時間のルール講習のあと、パー20コースに出てチーム戦(ベストボール)で競い合う。各レッスンの定員は10人だが、このプログラムを通して友達を作ることを奨励し、次に一緒にコースに出られるように仕向けていく。

このプログラムの参加料は100ユーロ(約1.3万円)だが、終了後の2カ月間はレンタルクラブも、練習場も、5ホールコースもすべて無料で使用できる。さらに、その後2年にわたってメンバーシップの割引やさまざまな優待プログラムが用意されていて、最初は少ない負担でゴルフに接することができる環境が整っている。「無料でゴルフを!」というキャッチコピーで、多くの初心者を引き付けているのだ。

老若男女、バラエティに富んだ人たちが一緒に初心者レッスンを受けていた

メンバーシップも柔軟だ。プレー頻度に応じたものや、家族割引も充実している。子供を無料にするなど、家族の取り込みも重点項目だ。「我々の初心者向けプログラムは、ヨーロッパで一番うまくいっていると思います。毎年100人ずつメンバーが増えていっているし、いまの5ホールを18ホールに拡張して、練習場もさらに拡大する計画です。ゴルフ人口が減っているのは、ゴルフ自体が悪いわけではなく、他のゴルフ場の人たちの考え方がちょっと保守的だったり、伝統に固執し過ぎたりしているのだと思います」とリーミッツ氏。

エストニアのゴルフ場経営は、革新的な電子政府を実現している政府のように斬新でスピード感に満ちていた。(エストニア・タリン/今岡涼太)

■ 今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka