ティマークの誘惑 オーガスタ3番は心理戦を乗り越えろ
4月のメジャー初戦「マスターズ」がいよいよ次週11日(木)に開幕します。すべてのゴルファーが憧れるジョージア州・オーガスタナショナルGCで、今年も熱戦が期待されます。当地は1934年、ボビー・ジョーンズとアリスター・マッケンジーの設計で開場し、年々進化を続けています。11番、12番、13番の“アーメンコーナー”は特に有名ですが、ほかにも攻略が難しいホールばかり。大会直前のこの連載ではアーメンコーナーの3ホール以外にポイントとなるホールを5つピックアップします。(解説・進藤大典)
■オーガスタナショナルGC 3番パー4(350yd)
序盤に訪れる、オーガスタでは距離が最も短いパー4です。ティショットからセカンド地点までは3ydほどの打ち上げになります。ヤーデージブックでまず目に入るのが左サイドのバンカー群で、229ydで入り、277ydのキャリーで越えていきます。春先の気温が上がりきらない時期に、アゲンストの風が吹くと確実にオーバーできるのは限られたロングヒッターだけ。松山英樹選手は今シーズン、飛距離もよく出ているのでチャンスがきっとあるはずです。
このホールでおもしろい、選手やキャディを悩ませるのが、実は日々のティマークが置かれるポジションにあります。例えばピンが右奥にある日は、1Wで距離を出してできるだけ近づいた方が、2打目の70ydほどのアプローチが“足も使える”(ファーストバウンドから転がすことができる)ため、易しくなります。しかしそういう日に限って、大会側はティマークを後ろに下げて、第1打で左のバンカーを越えるか、越えないかという勝負を持ちかけてくるのです
一方、ティをあえて数ydだけ前に出し、バンカー越えを誘ってくるときもあります。こういうシチュエーションのとき、カップはグリーンの手前側など狭いエリアに切られることが多い。1Wショットが成功すると、どうなるでしょう。ピンがグリーンエッジに近いタイトな場所にあるため、今度は中途半端な距離で“浮かせて止める”、難しいチップショットを要求されます。残りは40、50ydといったところ。スピンをかけすぎると手前に戻ってきてしまう。左サイドの狭いエリアに切られたときは、突っ込みすぎて奥にこぼれるリスクがあります。
マスターズ委員会はただ、ティマークの位置を動かすだけで、選手心理のギリギリのところを攻めてくるのです。
バンカー越えを狙わず、5アイアン前後でフェアウェイに刻むときも極力左サイドをキープしたい。テレビで見ていると「なぜわざわざ広い右側を狙わないのか」と思うかもしれませんが、フェアウェイは右サイドに行けば行くほど、第2打で上空の木が邪魔になるのです。また、グリーンも全体的な傾斜は右から左に下るので、左から攻めて上りの傾斜にぶつけてボールを止めたい。アプローチが難しくなるグリーンの右サイドには落としてはいけません。
グリーンの形状を見ると、左サイドのタテ幅が10ydほどしかないことが分かります。このエリアにピンがあるときは、2打目のボールが止まるまでハラハラ、ドキドキで眺めます。少し右から傾斜を使って寄せていくのがセオリーになるでしょう。
このホールはオーガスタで4つのパー5を除いて、最も易しいホール。平均スコアは「4.08」でバーディも多く見られますが、緻密な計算があってこそのスコアなのです。