カッコいい結婚記念日V シャウフェレは“世界一”のオールラウンドプレーヤー【進藤大典キャディ解説】
ザンダー・シャウフェレが「トラベラーズ選手権」で今季2勝目をつかみました。昨夏「東京五輪」での金メダル獲得を思い浮かべるファンの方も多いと思いますが、個人戦でのPGAツアー優勝となると、2019年1月「セントリートーナメントofチャンピオンズ」以来。実に3年半近く遠ざかっていたのです。
4月のダブルス戦「チューリッヒクラシック」で一緒にタイトルをつかんだパトリック・カントレーとの最終日最終組。首位スタートながら最終18番のティイングエリアに立ったときは、今季何度か優勝争いに加わっているルーキー、サヒス・ティーガラを1打差で追う展開でした。
1組前でプレーするティーガラが左サイドのフェアウェイバンカーにつかまり、1打では出せず。18番はそのバンカーはもちろん、右サイドにも深いラフが待ち受けるシビアなティショットが求められます。トラブルに見舞われているライバルの動向に少し心も揺らしながら、完璧な一打でフェアウェイのど真ん中へ。ティーガラのダブルボギーによってパーでも勝てる状況となる中、セカンドのウェッジショットもパーフェクト。文句なしのバーディフィニッシュで決めてくれました。
最終日の6月26日はサンディエゴ州立大時代から交際して昨年結婚したマヤ夫人との結婚記念日でもあったそうです。54ホール終了時点でトップに立つのは5度目でしたが、意外にも初勝利。昨年「マスターズ」での松山英樹選手との優勝争いも、まだまだ記憶に新しいところ。オリンピックでの活躍が示すように決して勝負弱い選手ではないのですが、善戦しつつ勝ち切れないというイメージを払拭する1勝にもなったはずです。
“世界一”と言ってもいいくらいのオールラウンドプレーヤー。身長は173㎝の僕と並んでも大きく変わらないくらいに感じるのですが、身体能力が抜群。バネのある軽やかなスイングで320ydをかっ飛ばしてみせますし、アイアン、パッティングを含めてゴルフにスキが見当たりません。
プライベートでも、とにかく優しいナイスガイ。昨年、僕が初めてジュニア大会を開催したときにも、出場した子どもたちのために二つ返事でビデオメッセージを送ってくれました。
今季のメジャーは7月「全英オープン」(スコットランド・セントアンドリュース オールドコース)を残すのみとなっていますが、米国人選手の中でも全英に対して特に強い思い入れを抱いているのがシャウフェレでしょう。
10種競技の陸上選手として活躍した父・ステファンさんがドイツとフランスのハーフということもあり、マスターズとともに勝ちたいメジャーとして「父がドイツ系だから欧州開催の全英」と話していたこともありました。もともとキャリア通算21試合のメジャーでトップ10入りが半数近い9度を数え、ハイレベルな安定感が売りの選手。これまで予選落ちが一度もない全英はカーヌスティで開催された4年前に2位となっていますから、期待も高まります。(解説・進藤大典)