2021年 RBCヘリテージ

親子タッグの恩恵 スチュワート・シンクは“ピりつかない”

2021/04/20 09:05
キャディの次男と優勝を喜ぶシンク(Patrick Smith/Getty Images)

スチュワート・シンクが「RBCヘリテージ」で今季2勝目を挙げました。47歳以上でのシーズン複数回Vは1960年以降でサム・スニード、ジュリアス・ボロス、ケニー・ペリー(2度達成)に次ぐ4人目のレアケース。2020―21年シーズンに2回以上優勝しているのが稀代の飛ばし屋ブライソン・デシャンボーとベテランのシンクだけというのも面白い現象です。

昨年9月の開幕戦「セーフウェイオープン」で2009年「全英オープン」以来となる優勝。復活を印象付けていたとはいえ、予選ラウンドで「63」をそろえて36ホールの大会最少ストローク記録を更新。若手に負けない爆発力を見せつけた後、週末はリードを生かして逃げ切るクレバーなプレーぶりでした。

コリン・モリカワとの2サム最終組。相手は昨年メジャーを獲り、2月にはWGCのタイトルもつかんだ新進気鋭の24歳。5打のストローク差以上にプレッシャーは感じていたはずです。

モリカワが1番でいきなりバーディを奪うスタートにも、シンクは楽しそうに、一打一打リラックスしてプレーしているのが伝わってきました。前回優勝時もバッグを担いでいた次男・レーガンさんの存在が大きかったと思います。

ハーバータウンGLは両サイドから林がせり出しているホールも多く、“空中のハザード”と呼ばれるほど厄介な林間コース。フェアウェイからのショットでも枝に邪魔されてトラブルになるケースがあるため、マネジメントが非常に重要となります。大西洋に面していて風も舞いますから、ジャッジに神経も使います。

しかし、ティイングエリアでのクラブ選択、グリーン上でのライン読みといったあらゆる場面において、シンクが優勝争いで“ピりつく”気配がありませんでした。親子タッグならではの雰囲気の良さとリズムの良さ。間近で信じて見守る息子の視線が、父としてのモチベーションを刺激しているようにも感じました。

最終日は家族も駆け付けて優勝を喜んだ(Sam Greenwood/Getty Images)

年齢を重ねたかつてのトップ選手が“身内”をキャディとして起用するケースは少なくありません。昨季欧州ツアーで年間王者に返り咲き、今季PGAツアーでも好調なリー・ウェストウッドはガールフレンドのヘレン・ストリーさんが務めることもしばしば。フィル・ミケルソンはキャリア全盛期をともにするなど25年間タッグを組んだジム・マッケイさんと2017年に袂(たもと)を分かち、弟のティムさんを後釜に据えました。

かつて乳癌と診断された妻のリサさんとともに、夫妻で新型コロナウイルスに感染する事態も乗り越えてきたシンク。最終日は、フライトを変更して婚約者とともに会場へ駆けつけた長男・コナーさんの誕生日でもあったそうです。

5勝のデービス・ラブIIIに次いでヘイル・アーウィンと並ぶ大会3勝目。力の源にも安心材料にもなった家族の存在が一因となったことは間違いないでしょう。(解説・進藤大典)

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