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【WORLD】United They Stand(3) 戦場からゴルフコースへ 米国退役兵とボランティア

2011/11/01 12:29

Golf World(2011年10月24日号) texted by Ron Sirak

このアメリカンレイクも、ハロルド(ペッパー)・ロバーツという元教師、そして朝鮮戦争後に退役した兵士の存在なくしては、今日まで存続することはなかった。アメリカンレイクは1955年に、朝鮮戦争後に退役した兵士達の余暇用に創設されたが、1995年には政府がVA関連のゴルフコースへの予算を組まない方針を固め、閉鎖に追いやられそうになった。アメリカンレイクを除く全てのゴルフコースは閉鎖となったが、このコースだけはボランティアスタッフで運営することを主張し存続が認められた。だが、予算も無い状態での修復は厳しく、あわや閉鎖というという事態になっていった。

「ここは、1950年代以降も多くの人の人生に影響を与えてきました」と語るのは、80歳になってもハンディ6でプレーするロバーツ。「このコースが創設された目的は、朝鮮戦争、そしてベトナム戦争で傷ついた兵士達のリハビリで、今も変わりません。それ以降の戦争を見ても、過去の戦いよりも兵士達は重傷を負っている感が強く、このコースが無駄になることはないと思っていましたよ」。ロバーツは2001年にゴルフインストラクターとしてアメリカンレイクのボランティアに参加。翌年にはザ・フレンズ・オブ・アメリカンレイクという団体を設立し、2003年には非営利団体の認可を受けた。フレンズでは寄付金を集め、新しいスプリンクラーシステム、屋根付き練習場を設立。四肢切断手術を受けた兵士達用の電動カートを購入し、バンカー、グリーン、ティーも新たに設置。そして2010年には、元はコンクリート製のクラブハウスだった場所に、8400スクエアフィートもの巨大練習施設を建設した。ウィックスは、「ペッパー・ロバーツこそ、VAが一度は予算を組まないと決定したこのコースを再興した人物です。それからは、ここを全員で守るという精神が生まれました」と、困難に直面した当時について語った。

フレンズはその後も、”First Swing”というゴルフクリニックを設立。ここでは、身体ないし精神障害を持つ兵士達がゴルフを学ぶ(復習する)ことが可能で、ゴルフに必要な身体の使い方や、集中の仕方、精神面のコントロール方法に至るまで、リハビリの一環としての指導も行っている。四肢切断者から視力を失った兵士、重度のPTSDに苦しむ兵士達も一般の海兵隊員から空挺隊員等と混ざり、友情を育んでいる。

2009年には元PGAプロで、タコマ出身のケン・スティルもメンバーに参加。アメリカンレイクの役員ディレクターという肩書きを与えられ、1969年のライダーカップでチームメートだったジャック・ニクラスを説得し、無償でセカンドナイン9コースの設計を依頼した。スティルは、「私がこのコースが気に入っている点としては、厳密に全員がボランティアで参加しているということ」とコメント。コース設計を依頼されたニクラスは、「ケンから連絡があって、コースが必要と言われてね」と経緯を説明。「大事なことは、誰がプレーするかを考えないといけないことだった。障害を持つプレーヤー達がバンカーに入って、しっかりと抜け出せるような設計や、あらゆる工夫が必要だった」と語った。

ザ・フレンズ・オブ・アメリカンレイクでは、現在ニクラスが設計したセカンドナインの設立、そして芝生がはげてしまっている芝の張替えの資金として、合計500万ドルの募金を集める活動を今年の年末から開始する予定。発案者のロバーツによれば、現時点で70万ドルが集まったという。アメリカンレイクのメンテナンス費用は十分に賄えているが、このコースを更に使い勝手のあるものに進化させるための資金は不十分。VAホスピタル患者のプレー費は無料で、クラブ、ボール、ティー、備え付けのカートの利用が可能。退役した兵士、もしくは現役の兵士達も1回の利用で12ドル(1日券)と安く、ゲストも15ドルと低価格。年間パスは150ドルで、カート使用料は9ホールごとに5ドル、練習場でのボールは小さいケースで2ドル、大きなケースになっても4ドルとリーズナブルな価格になっている。マッケンティの話では、昨年の利用者数は2万5000人に上った。

新たに利用を希望する場合、まず始めにラーニングセンター内のシミュレーターでショートホール3コースを体験してもらってから、レギュラーコースに出るという流れとなる。ウィックはこの仕事について「こんなに充実感が得られる仕事は他にない」と語ると、続けて言葉を選びながら次のように話した。「もう2度とゴルフが出来ないと思っていた人達が力強くゴルフボールを飛ばす瞬間に立ち会えることが、何より満足感を得られる瞬間だね」。アシスタントマネージャーのロジャー・ギャッツ(兵役20年後に引退したベテランで、現在はボランティアをまとめるコーディネーター)もまた、アメリカンレイクでの活動に感慨深い様子で、「我々は多くの人の人生を変える手助けをしてきました。いつだったか、ある女性から、自殺しかけていたご主人を助けてくれたと感謝されたこともありました」と語った。

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