米国女子ツアー

映画化された英雄は甘えん坊? アリヤ・ジュタヌガン<LPGA選手名鑑>

2022/04/28 10:56
アリヤ・ジュタヌガンはタイの国民的ヒロイン

朝4時半に目を覚まし、足首に重りをつけて家の周りをランニング…。アリヤ・ジュタヌガン選手(タイ)はスポーツドラマや漫画のような少女時代を過ごしてきました。

バンコクのゴルフ場でプロショップを経営していた父の元で育ち、幼い頃からゴルフクラブがおもちゃ代わり。予選会を通過して「ホンダLPGAタイランド」でLPGAツアーデビューを飾ったのはなんと11歳のときでした。2016年「全英女子オープン」でタイ勢の男女を通じて初のメジャータイトルを獲得。そのインパクトは、母国で2019年に伝記映画『頂へのティーショット』が制作されるほど大きなものだったのです。

■ドライバーより2アイアン

アリヤ・ジュタヌガン Ariya Jutanugarn
◆生年月日 1995年11月23日
◆出身 タイ・バンコク
◆ルーキーイヤー 2015年

プロ転向実質1年目の2013年、初勝利は欧州女子ツアーでした。その直前の2月にはやはり母国でのLPGAツアー「ホンダLPGAタイランド」で活躍、最終日の最終ホールでトリプルボギーをたたき、単独首位から転落する悲劇となりました。

欧州で腕を磨いて2014年にLPGAのQスクールを通過して翌年の出場権を手にすると、2年目の2016年に才能が開花します。「ヨコハマタイヤLPGAクラシック」でタイ勢初のツアー優勝。「全英女子」を含め5勝を挙げて賞金女王に輝きました。

プレースタイルは豪快そのもの。キャディのレス・ルアーク氏のアドバイスで1Wをキャディバッグから抜き、ティショットを2Iで打つスタイルを確立。現在でもほとんど1Wを使いません。以前、「ULインターナショナルクラウン」という対抗戦のプレーオフで1Wショットを見ましたが、パワフルでインパクトの音がほかの選手とは全く違いました。パー4でグリーンサイドまで運び、チップインイーグルを決めたシーンが忘れられません。

■笑ってから打つ

プレーは早い

2017年は2勝。スイングコーチをゲーリー・ギルキスト氏からクリス・メイソン氏にスイッチしてから復調し、2018年には「キングスミル選手権」で畑岡奈紗選手をプレーオフで下したほか、「全米女子オープン」でメジャー2勝目を飾るなど3勝をマークして2回目の賞金女王のタイトルを獲得しました。

屈指のロングヒッターである一方で、自分自身のメンタルと向き合ってきたエピソードも多くあります。メンタルコーチはかつて宮里藍さんも師事したピア・ニールソン氏、リン・マリオット氏のコンビ。「パットを打つ前に笑顔をつくるように」とアドバイスされ、プレショットルーティンに入れています。

2016年「マニュライフLPGA」で最終日にショートパットを外した時のこと。キャディだったピート・ゴッドフリー氏がたまったフラストレーションを解消してくれました。「ディズニー映画の『Frozen』(アナと雪の女王)を観たことがある? Let it goだ。気にしないで」。最高峰での戦いをする選手たちも、そんな一言で精神面を健康的に保つのです。

構えてから考え込まずにすぐに打つため、プレーが早いのも特長。ヤーデージブックはほとんど見ずに回ります。ダウンブローに打つボールは迫力十分。それでいて、アプローチショットの引き出しも多くあります。

■姉モリヤの前では甘えん坊?

2021年は「ホンダLPGAタイランド」、そして団体戦の「ダウグレートレークスベイ招待」で姉のモリヤ・ジュタヌガン選手とのペアで優勝しました。アリヤ選手は「お母さんとお姉ちゃんが面倒を見てくれるから甘えてしまう」と話します。

しっかり者のお姉さんとは真逆の性格。オフの日は家でゴロゴロ、TVの前でダラダラ…と、あまり物事を気にしないタイプ。姉妹は仲が良く、練習ラウンドやホテルは常に一緒。スイングコーチ、メンタルコーチ、パッティングコーチも一緒。ラウンド後も電話で『今どこ?』と確認し合って合流します。練習場やパッティンググリーンで、お互いのスイングやストロークをチェックしてアドバイスを送り合います。

拠点は畑岡選手らと同じフロリダ州オーランドのレイクノナG&CCで、2020年にマルチーズを飼い始めました。遠征中は母のナルモンさんが帯同し、洗濯や荷物のパッキング、食事面でもサポート。ゴルフについては一切アドバイスしません。ところで、タイの選手は本名が長いことから、ニックネームがあり、アリヤは「メイ」、モリヤは「モー」、お母さんは「アップル」です。

最近のアリヤ選手は血液検査をしたところ、数値が良くないことが分かりダイエットを開始しました。ランニングに励み、食事中も糖質を制限。デザートが大好きで、どうしても食べたいときも一口、二口でガマンしてかなりの減量に成功しました。