2019年 全米プロゴルフ選手権

アダム・スコットに見るボール選びの難しさ

2019/05/19 19:01
お気に入りのボールを手に持つアダム・スコット(写真は2日目)

◇メジャー第2戦◇全米プロゴルフ選手権 3日目(18日)◇ベスページ州立公園ブラックコース(ニューヨーク州)◇7459yd(パー70)

アダム・スコット(オーストラリア)は、首位を独走するブルックス・ケプカと9打差の 8位で最終日を迎える。スコットと言えば、長尺パターの印象が強いと思うが、今年の序盤は通常の長さのパターを使用していた。今大会で長尺パターに持ち替え、3日目までの平均パット数は全体16位の「1.742」としている。

また、グリーン周り30yd以内のショットのスコア貢献度は3日間トータルで「5.914」と、出場選手中1位に立っている。

2013年の「マスターズ」を制したスコットは翌年の秋、ボールを替えるべきかどうか契約メーカーの担当者に相談した。タイトリスト「プロV1」を使っていたが、フルショット時にもう少し高い弾道を望み、高弾道が出やすい「プロV1X」への変更を考えたのだ。

素人目からすれば、同じメーカーの同じブランドなのだからさして影響はないだろうと思うのだが、プロは違う。慎重なテストを重ね、15年から変更した。スピン量も申し分なく、スコットはご満悦だった。

ところが、である。15年は1勝もできないシーズンとなってしまう。同年の暮れに再び担当者を訪れ、勝てない原因を探った。聞き及んでいる詳しい分析結果は伏せるが、結論に担当者も本人も驚いたという。

大まかに言えばこうだ。ボール変更後の弾道は少し高くなったのだが、慣れていた高さよりも上にボールが飛んでいくのをフォロースルーで見た瞬間、スコットの頭の中ではそれを理想と考えているのに、身体が「いつもより高い位置のボールが飛んでいくのは不自然。もう少し低く打たねば!」という反応を示していたのだ。

その結果、身体が低く打ち出そうと無意識に反応してしまい、アドレスやインパクトが低く打ち出すためのスイングへと微調整されていた。これが不調の原因という分析だ。

スコットは16年に入り、元のボールに戻した。すると2月にすぐ2位となり、その翌週から2週連続優勝を達成した。理想よりも低い弾道が出るボールなのに、である。

このケースは、自分が良いと思ったものを使っても勝てるわけではなく、場合によっては本人が知らずのうちに不調の原因になるという、ゴルフの道具選びの難しさを示している。

選手がクラブやボールを替えたニュースを読む際、この話を思い返していただければ、同じニュースも違った見え方になるかもしれない。(ゴルフカメラマン・田辺安啓)

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発売日:2019/02/08 オープンプライス
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