2022年 英国マスターズ

「いま僕はココにいます」Vol.139 【特別編】拉致強盗・コロナ陽性から復帰

2022/05/05 14:59

◆タイから帰国後にコロナ陽性

タイの寺院。神頼みもしてきました

思わぬ形で1週間を日本で過ごし、新品のクラブで翌週の3月下旬「コマーシャルバンク カタールマスターズ」で復帰。その後はギアの調整の意味も込めて、4月の「マスターズ」と同じ週に行われたタイでのアジアンツアー「トラストゴルフ アジアンミックスカップ」に出場しました。

えーと、オチに次ぐオチなのですが、僕、当時は出場するつもりでいた先週スペインでの「カタルーニャ選手権」を欠場しました。バンコクから帰国した中部国際空港で、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性判定が出たため、8日間の施設隔離(検疫所の宿泊施設)を余儀なくされたのです。体調は…これが、「こんなに何も出ないものなのか」というほどの無症状。ただただ、ホテルの部屋でじっとしていたのです。

ちなみに帰国後の施設隔離ですが、コロナ禍で海外遠征を繰り返しているうちに、地域と時期によって変わる一般的な3日間、6日間、8日間、10日間の強制隔離を経験したことになります。成田、羽田、関西国際、中部国際と日本の主要国際空港近くでの隔離もコンプリート! なんのこっちゃ…。

◆監禁された車内で考えたこと

タイでは新しいクラブの調整も

アジアンツアーを手始めに海外ツアーに身を置くようになってから約10年、恐怖体験は何度もありましたが、こんなトラブルに巻き込まれたのは初めて。連絡を受けてすぐに対応してくれた父、実家の三重から成田まで車で迎えに来てくれた母をはじめ、たくさんの人に心配とお手数をかけしました。

ただし、冒頭でお話しした通り、僕はこれまで以上に気を引き締めるつもりですが、今回の一件が旅をやめる理由にはなりません。命あってこそとはいえ、思わぬアクシデントで実感したこと、再認識したことも多々あったのです。

手持ちのものがなくなり、有無を言わさぬ“断捨離”になりました。ただ、拘束された車内で僕はなんだか眠くなったり、トイレに行きたくなったりと、その場を冷静に過ごしていたような気もします。「とりあえず今週の試合は欠場かな。カタールの試合は出たいな」とゴルフのことをまず考えました。自分としては人生の肥やしに、あとで笑える話にしたいくらい。会うたびに心配してくれる周りの人々や選手たちとの温度差を感じているくらいなのです。

◆神様は見ている

今週はメグさんがキャディに復帰します

車の中でもう一つ考えたことがあります。目をつぶっている間「神様はやっぱり見ているんだな」と、ふと思いました。今年は開幕から好結果を求めすぎて、小さなことにイライラしてばかり。ゴルフを楽しむ気持ちを失っていました。だから、悪いことはそんなときにこそ起こるんだろうな…と。僕にとっては職業ですが、“たかが”ゴルフなんです。子どもの頃から好きでやってきたことが、大人になった今も好きなまま続けられていること自体が本来、ものすごく幸せなはず。そんな基本的なことを忘れていた自分を、神様はきっと見ていた。

南アフリカ、なかでもヨハネスブルグやプレトリアは確かに日本に比べれば、危険な都市としても知られています。世界中にそういった地域があること、そしてそういう人々がいることは事実でしょう。けれど、僕はこれからも南アに行くし、試合にも出るつもりです。

英国の空は相変わらずの鉛色。それでもゴルフは楽しい

僕らを襲ったのは(おそらく)現地の男たち。しかし、困った僕を空港などで助けてくれた、「私たちの国で起きたことを本当に申し訳なく思う」と頭を下げてくれた人々も南アフリカ、ヨハネスブルグの方でした。それ以前に、僕はゴルフを通じて南アフリカの選手やキャディにいい奴らが多いことも知っている。

思わぬ形でクラブもキャディバッグも、シューズもバックパックも新品になりました。これも、たくさんの人の協力があってのことで感謝してもし切れません。欧州と日本のタイトリスト(契約先)のスタッフのおかげで、事件から1週間もたたないうちにカタールで用具一式を受け取ることができたのです。

欧州ツアーは中盤戦に入ります。ゴルフの競技は強盗被害に遭っても、コロナ陽性で試合を欠場しても、それは言い訳になりません。残りの試合で良いニュースを届けられるように頑張ります!

今週からはいよいよ欧州での大会が多くなります
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