<選手名鑑218>アンドリュー・ビーフ・ジョンストン(後編)
■ “Beef”から“Tofu”へ!?動物愛護団体から要望
“ビーフ”というユニークな愛称と好成績で一気に注目を集めはじめた8月のある日、動物愛護団体からアンドリュー・ジョンストンの元に“豆腐ステーキと豆腐ソーセージ”が届き、抗議文が添えてあった。内容は「動物性以外の健康的な食事をしてほしい」、「名前をAndrew “Beef” JohnstonからAndrew “Tofu” Johnstonに変えてほしい」という趣旨だった。「動物性の食事をやめることで心臓病のリスクを軽減する、そうすれば寿命が平均6年から10年延びる」という説明も付け加えられていた。
差出人は、動物愛護団体の英国責任者を務めるケイト・スミス氏で、彼女は著名人をターゲットに抗議や勧告、植物性食料を送って活動をアピールしている。これまでボクシングのWBA世界ヘビー級王者デビッド・ヘイや、テニスのキャリアグランドスラムを達成した、世界ランク1位のノバク・ジョコビッチらが抗議を受けて食事を変えたと言われ、それら一連の報道で、団体の存在が知られるようになった。ビーフがスミス女史から指名されたことは世界に影響力のある人物と認定された、ということ。“ビーフ”をやめて“豆腐”に改名するか否か?は今のところ不明だが、これも著名人ゆえ、のことである。
■ ルーク・ドナルド、セルヒオ・ガルシアに並ぶアマ実績
ジョンストンがゴルフを始めたのは4歳の頃。シングルハンディの父に、パターゴルフに連れて行ってもらったのが最初だった。その後、地元ゴルフ場のメンバーになり、メキメキと上達。14歳の時には地元の中学生ナンバー1になり、16歳の時にハンディ『0』になった。その後「ジャック・レグリース・トロフィー」の選抜選手に選ばれた。同大会は「イングランドとアイルランド代表」対「それ以外の欧州代表」で競われるマチュア競技で、18歳以下、各々9人が選出される。メンバーになることは、欧州のアマにとって最高の栄誉であるとともに、最高レベルの実力者の証で、かつてルーク・ドナルド(38)や、セルヒオ・ガルシア(36)らも経験し、プロへのステップとした。ドナルドは2012年、欧米両ツアーの賞金王という初の快挙を成し遂げ、2011年5月に世界ランク1位へと上りつめた。ガルシアは第5のメジャー、「ザ・プレーヤーズ選手権」を含め、米PGAツアー9勝、欧州ツアー11勝を含め、世界で18勝という実力者だ。ジョンストンも先輩たちに続きたいと願い、渡米を目指した。
■ チーズバーガーの日に決めたシード権
09年、20歳でプロに転向し、14年の欧州下部チャレンジツアーで2勝、翌15年から欧州ツアーにフル参戦を果たした。16年4月、スペインで行われた「バルデラマオープン」でユースト・ラウテンと競り合い、1打差で振り切って欧州ツアー初優勝を挙げた。悪天候で展開は我慢比べの様相を呈したが、最後まで粘り抜いたジョンストンが勝利を手にした。このプレーこそが彼の真骨頂なのだ。
勢いに乗り、ウェントワースで行われた全米オープン国際予選会で4位になり、全米オープンに初出場した。結果は54位だったが、米PGAツアー出場への布石を敷いた。欧州ツアーの勝利で7月のブリヂストン招待の出場権を獲得し、世界選手権に初出場を果たし42位。その後、帰国して母国開催の全英オープンで8位となり、自身のメジャー最高位をマークした。その後、再渡米して全米プロ選手権に初出場。60位と振るわなかったものの、メジャーやビッグイベントへの出場は大きな経験になった。
これらの成績でPGAツアーのポイントランク200位以内相当に入り、2016-17年シーズン出場順位入れ替え戦のファイナルズに参加。初戦のDAP選手権で28位タイ、2戦目のボイシーオープンでは4位に入り、賞金総額約5万5千ドルに積み上げて、優先順位21位でシード権を獲得した。シード権を確実にしたボイシーオープン最終日となった9月18日は、米国の“ナショナル・チーズバーガーデー”で、やはりビーフがビーフに幸運を運んだのかも!?同試合の優勝者はマイケル・トンプソンだったが、「“ビーフ”が来季のシード選手に!」と、チーズバーガーにかぶりつく姿で喜びを表す写真とともに、トップニュースで報道された。
ちなみに彼はロンドンっ子らしく、ミドルネームを“Beer”にしてもいいほどのビール好き。世界ビールデーは8月第1週の金曜日。試合の最終日は日曜日なので優勝の祝杯とはならないが、2日目の首位やコースレコードの祝杯はあるかも?