ハーマンの「全英」制覇ギアからアマチュアが学ぶべき5つのポイント
ブライアン・ハーマンは、ロイヤルリバプール開催の「全英オープン」で後続に6打差をつけ、PGAツアー3勝目となるキャリア初のメジャー制覇を達成した。PGAツアーのドライビングディスタンス(平均飛距離)が144位(293.7yd)という36歳のベテランは、安定したボールストライキングと、グリーン上での別次元のパフォーマンスを複合させ、難しいコンディションの中で世界のトッププレーヤーたちを退けた。
6位タイのロリー・マキロイ(北アイルランド)や2位タイのジョン・ラーム(スペイン)らと比べたら、毎ドライブで20~30yd置いていかれているかもしれないが、彼は自身の強みを倍増させ、弱点を最小化させるようにギアのセットアップを施している。
以下は、GolfWRX.comが推奨する、ハーマンのギア設定からアマチュアが学ぶべき5つの重要ポイントである。
1)適正なフレックス
ハーマンは他のツアープレーヤーより柔らかいシャフトでプレーしている。彼のスイングスピードは他よりも遅いため、X、あるいはXXといった硬さのシャフトを使用する必要がないから、比較的フレキシブルなシャフトを使用している。
寛容性の高いタイトリスト TSi2ドライバー(9度)にグラファイトデザイン ツアーAD-IZ 5Sシャフトを、タイトリスト TSi2フェアウェイウッド(13.5度)には藤倉コンポジット スピーダー661エボリューションII Sシャフトを装着している。PGAツアーの標準からすると、かなり柔らかいが、それによって打ち出し角とスピン量を稼いでボールをより遠くにキャリーさせることができ、飛距離と精度を最適化している。
アマチュアはこれに学び、プライドを捨て、自身のヘッドスピードに適したシャフトを選ぶべきだ。もし、あなたの速度が時速120マイル(約53m/秒)を超えるツアーの飛ばし屋ではなく、ハーマンのそれ(時速109.88マイル=約49m/秒)に近いのなら、効率と飛距離アップを獲得するために、より柔らかいフレックスのシャフトを手に取ってみる価値はあるだろう。
2)寛容性を最大限に活用
ハーマンはショートアイアンとミドルアイアンに関しては、タイトリスト620 CBアイアンを使っている。同モデルはアドレスでコンパクトなボディと薄いトップラインがブレード型を思わせる設計になっているが、キャビティバック構造がオフセンターヒットに対して少し寛容性を高めている。
3、4、5番アイアンに関しては、さらにテクノロジーの助けを借りる形で、タイトリスト U-500モデルを使っている。同モデルは、フェースでのボール初速を高めるため複合素材構造となっており、番手毎にクラブヘッド内でより重いタングステンによる重量配分が成されており、これで重心をコントロールするとともに、安定性と打ち出し角の向上を実現している。620 CBと比較すると、U-500は高弾道で、ミスヒットのマイナス作用が少なくなっている。
ロングアイアンはバッグ内のクラブで、最も難しい番手となることが多いが、ヘッドスピードの遅いプレーヤーには、テクノロジーが飛距離を最大化し、グリーンでボールを止める力を得るための助けになる。
3)古く、信頼できる大型パター
「全英オープン」の4ラウンドを通じ、驚くべきことにハーマンは10フィート(約3m)以内のパットを59回中58回も成功させた。
彼は長年にわたり、2016年に一般発売されたテーラーメイド スパイダーOS(オーバーサイズ)CBマレットパターを使用している。GolfWRX.comは2017年に初めてハーマンのパターを写真に収めた。
スパイダーOS CBは宇宙船型の形状と大型の投影面積が高慣性モーメントを生み出す設計になっている。これによりオフセンターヒットでのフェースのねじれが軽減される。また、この形状はストロークでヘッドを安定させやすくしている。このパターは、後方への重量配分のため、後ろ側がデュアルウィング形状となっており、アライメントの補助としてクラウンに白い3本線が引かれている。
ただし、ハーマンは実のところ、2023年序盤はグリーン上の不調に苦しみ、もう少しでこのパターを“控え”に回すところだったのだ。実際、4月の「RBCヘリテージ」の際「今年はブルペンへ継投(スタメンのパターをベンチに下げ)し、何か違う物を投入しようかと真剣に考えた時期もあった。これはずっと良いパターだったけれど、今年は何度も悪さをしてきたんだ」と述べている。
しかし、最終的に昔からの恋人を手離さず、ロイヤルリバプールのグリーンを完全に征服したのである。
4)アライメントを映し出す
ゲームを向上させるテクノロジーは、何もゴルフクラブに限って駆使されているわけではない。ゴルファーはコースへ出る直前まで使用できるような、ゲーム向上を促すために設計された用具を使用することもできる。日曜の優勝後、ハーマンは最近使用しているパッティングのアライメント補助器具について話をした。
「馬鹿げた鏡みたいな見た目だけど、リリースパターンが良い感じになっている器具なんだ。僕は、パットをカットに入れ過ぎていた。とにかくボールを感じて、ともするとパターでささやかなドローを打つような感じで長い時間をかけて取り組んできたのだけれどね。この器具は何年も前にどこかの大会の練習グリーンで見つけて、気に入ったんだ。今年は先月くらいまで、パッティングの調子が良くなかった。自宅の物置でこれを見つけて使ってみたら、理に適っていて、パッティングが良くなり始めたんだ」
PGAツアーの用具レップであるアーニー・カニングハムによると、ハーマンの使用しているパッティングミラーは、アイラインゴルフの「パッティング・アライメント・ミラー」であり、ボールに対し、ユーザーに両目を正しく揃えるのを促すと共に、ストロークパスの視覚的なフィードバックも与える仕組みになっているとのこと。
5)適正なボール
ボールは全ショットで使われる唯一の用具であり、その設計はボールが空中をどのように飛ぶかについて、最も大きな役割を果たしている。だから、然るべきクラブの使用が重要なのと同様、適正なボールも非常に大切なこととなる。
タイトリスト契約選手のハーマンは、2017年にボールを競合他社の物からタイトリスト プロV1に変更し、これがかなりインパクトのある進歩をもたらすことになった。
タイトリストによると、ハーマンは2022年「全米オープン」前、以下のように述べたという。「2017年にボールを他社の物から変更して、効果は即座に現れた。PGAツアーで直近の4年間は、自分にとってベストの4シーズンだった。前のボールでは、僕は一度もしっかり飛ばすことができなかった。コントロールするのに手を焼いていたし、特に風の中では厳しかった。言ってみれば、完全に180度の違い。アイアンショットの弾道もそうだし、グリーン周りのコントロールもそうだけど、何打救われたか分からないね」
風の中でボールをコントロールすることが必要不可欠となる大会を一つだけ挙げるとするならば、それは「全英オープン」になる。ハーマンは然るべき準備をして臨み、支配的なやり方でそれを遂行し、初めてクラレットジャグを手中にしたのである。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)