“別居”も乗り越え ニック・テイラーと相棒パターが奇跡のパットを決めるまで
ニック・テイラー(カナダ)と彼の使用するテーラーメイド スパイダー ツアーレッド パターは長年の相棒だ。ともに浮き沈みを経験し、昨年は約3カ月の“別居期間”も乗り越えた。そしてこのパターはあのシーンにも、そばにあった。
先週の「RBCカナディアンオープン」のプレーオフ4ホール目。72フィート(約22メートル)のパットを見事に沈め、約半世紀ぶりに母国のナショナルオープンを制覇したカナダ人選手となったあの場面に、である。
「全米オープン」の開幕を直前に控えた火曜日にテイラーはGolfWRX.comに対し、長年連れ添った傷だらけのパターに関する歴史を回想してくれた。
「試合で使い始めたのは2018年のことだった。僕は当時、(8月)リノタホオープンでシード権をかけて戦っていた。僕はあの週、3回パターを変えたんだ。同じ大会の期間中に3回だよ」。スパイダーと初めて出会った時、テイラーはどん底で、グリーン上でのフィーリングを模索していた。PGAツアーのシードを失う危機に瀕して、行きついたのがスパイダー ツアーレッド。2016年に一般向けに公式リリースされ、ジェイソン・デイ(オーストラリア)が一躍有名にしたパターだった。
このパターは、彼がリノで使用した3本で一番のお気に入りとなり、次に出場した2018年「ウィンダム選手権」では大会を通じて大役を任された。テイラーは8位タイで大会を終え、ツアーでのもう1年を確かなものとしたのである。
その後、しばらくは順調な航海となった。テイラーは数年にわたりスパイダーパターを使い続け、2020年に「AT&Tペブルビーチプロアマ」で優勝した際もバッグに収まっていた。
しかし2022年に入ると、彼らの関係性は悪化した。テイラーは長年の相棒をベンチに下げる決断を下したのである。「去年は確かこのパターとは3カ月の空白期間があった。僕は自分が思うように上手くパッティングできていなかったんだ」
実のところ、この別離が彼らの関係性を救ったと見ることができるかもしれない。と言うのも、短い別居期間を経て再び一緒になったことで、彼らの絆はそれまで以上に強くなったのである。「3カ月後にまた実戦で使ったんだけど、とにかく素晴らしい感じがよみがえった。もしかしたら、必要だったのはこの小休止だったのかもしれない。この1年はずっと素晴らしいから、しばらくはバッグに残るよ」
もちろんこのパターは今週もここにある。ロサンゼルスCCで米国のナショナルオープン制覇を狙うテイラーの手の中に。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)