心に響いた「がむしゃら」 金谷拓実が記す自分だけのストーリー
2020年10月にプロ転向し、同11月の日本ツアー「ダンロップフェニックス」で初勝利(通算2勝目)。順風満帆なルーキーイヤーを送っている金谷拓実が、PGAツアーのトッププレーヤーが記すスペシャルコラムシリーズに登場した。アマチュア時代に「マスターズ」に出場し、同じ「三井住友VISA太平洋マスターズ」で優勝、そして東北福祉大出身の先輩である松山英樹とは比較されることも多い。輝かしいアマ時代の功績から来る重圧、ジュニアたちに向けてのアドバイスをPGAツアーに語った。
ひた向きに取り組む
比較されること。それは十分に理解できます。
松山選手は「アジアアマチュア選手権」で優勝し、僕もチャンピオンになりました。松山選手は「三井住友VISA太平洋マスターズ」をアマチュアで制し、僕も勝ちました。松山選手は「ダンロップフェニックス」でタイトルを奪い、僕の手にもそのトロフィーがあります。
多くの人が、僕が先輩の軌跡をたどっていると思われているかもしれません。でも、僕自身はそう考えていません。比較されるのは光栄なことですが、共通点は同じ東北福祉大だということくらい。僕自身、松山選手のレベルにまだまだ達していないと思うのです。
調子が悪いときでも大崩れせずにスコアをまとめる松山選手の安定感は素晴らしいというほかありません。そこが僕とは大きく違う。同じプレーはできませんが、試行錯誤して自分自身の安定感をレベルアップさせたい。
中学を卒業する時、先生からいただいた「がむしゃら」という言葉が心に響きました。以来、この言葉が常に頭にあります。言い換えること、別の表現は難しいですが、僕の中では「ひた向きにやる」という意味に尽きます。物事がうまくいかないときも、ひた向きに取り組む。子どもの頃でしたが、そう固く決心しました。
好きなことをひたすらに
アジアの文化、特に僕が育った日本では子どもは1つの習いごとに没頭し、スキルをマスターすることがよくあります。楽器を習う人もいれば、サッカーや野球を習う人がいる中、僕はただゴルフの腕を磨きたかった。練習をやり続ける大切さを学びました。それと同時に生活の中でバランスを保つことや、純粋に子どもになれる時間を見つけることも大切だと思っていました。学校での行事やクラスメートと遊ぶことがリフレッシュになっていました。
スポーツが好きで他の種目にもトライしましたが、ゴルフが一番競技として結果が出ました。幸い、自分に興味がないことを家族や友人に強いられることもなく、練習でも本番でもプレッシャーを感じることはありませんでした。自分が好きなことを、ひたすら自分のためにやってきたという自覚があります。スイングを作るために必要なことはなんでも取り入れ、繰り返しやったことで自信につなげてきました。
プロになった以上、これまでのアマチュアとしての肩書きは関係ありません。今できることは今までやってきたことを続けるだけだと考えています。
プロ転向し日米で4試合目の「ダンロップフェニックス」で優勝できたのは僕にとって大きなことでした。ジョニー・ミラー、セベ・バレステロス、トム・ワトソン、アーニー・エルス、タイガー・ウッズのようなPGAツアーのトップ選手たちがこの試合で優勝し、彼らとともに歴代王者に自分の名前を連ねられたことは光栄です。自信にもなりましたが、その名に恥じないようなプレーヤーにならなければと気が引き締まる思いです。
2021年初戦は「ソニーオープンinハワイ」
どの試合に行っても、どの選手を見ても、それぞれの選手が自分のストロングポイントを持っていて、ゴルファーの層は本当に厚いと感じます。そんな選手たちの中にいるだけで、今以上にゴルフを磨きたいとモチベーションが高まります。将来、彼らと同じレベルで戦えればと思います。今週の「ソニーオープンinハワイ」は自分のゴルフが世界のトップ選手たちを相手にどこまで通用するかを試す機会にもなります。
松山選手のようにならなければいけない、というプレッシャーはありません。自分は自分であり続け、ひた向きにやり続けるつもりです。ジュニアゴルファーのみなさん、親御さんもそう考えられてはどうでしょうか。ゴルフをとにかく楽しんでほしい。ボールがカップに入った時の達成感、遠くに飛ばした時の爽快感以上のものはないと思います。