2020年 ツアー選手権

「口座に数百ドル」の時代から ダスティン・ジョンソンは年間王者になった

2020/09/24 16:19
パートナーのポーリナとツアーでのキャリアを歩んできたダスティン・ジョンソン(Getty-Images)

ダスティン・ジョンソンは9月、2019-20年シーズン最終戦「ツアー選手権」を制して初のフェデックスカップを手にした。ここ13年連続で年間1勝以上(通算23勝)を挙げ、世界ランキング1位の常連となった36歳は念願の年間王者の称号も獲得。世界最高峰のツアーで戦うトッププレーヤーが記すスペシャルコラムは今回、ジョンソン自身が輝かしい“いま”に至るキャリアを回想した。

■最後まで緊張しっぱなしのシーズン最終戦

フェデックスカップをついに獲得することができて、感無量だ。手にするのが難しいトロフィであることは言うまでもなく、僕自身これまでに何度か惜しいところまでいったシーズンがあった。今回は、自分で自分の運命をコントロールすることができたのだと思う。そうでなければ、手にすることはできないと分かっていた。「ツアー選手権」にランクトップで乗り込んで、最終日も首位をキープしたけれど、最後まで良いプレーをしなければいけないと思っていた。自分のプレーをとても誇りに思う。もちろん、ここに至るまでの4試合でも、とても調子がよかったんだ(編注:ジョンソンは直近の大会で2位、優勝、2位と好調だった)

スタート時の2打差というリードがあっても、できる限りストロークを稼ぐ必要があると思っていた。タフなイーストレイクGCでしっかりとプレーできたと思う。最終日はかなり厳しいラウンドになったし、終わって心底ホッとした。今はやっと落ち着いて喜びに浸ることができるようになった。試合中は、緊張しっぱなしだったからね。

リーダーボードを見ると、僕の名前の下に名だたる選手がずらりと並んでいて、みんなそれぞれ良いプレーをしていた。最後は予想通りかなりの接戦になったから、相当良いプレーをしないとこれはダメだとわかっていたよ。ラウンドが始まる前も、すごく緊張していた。いつものこと、とは言ってもね。その後に少し気持ちは落ち着くんだけど、今回は折り返して後半でまた緊張感が戻ってきた。周りの素晴らしいプレーヤーたちのことを考えれば、優勝するためにはラスト9ホールを良いスコアで回らないといけないと思っていた。

ここで優勝できたことは、僕にとってすごく大きな意味があった。直前の「BMW選手権」では最終ラウンドを首位でスタートして、最後にすごく良いパットを決めてプレーオフにまで持ち込んだけれど、結果的にジョン・ラームにプレーオフで負けてしまった。だから、シーズンの最終日を5打差で迎えても、きちんとフィニッシュまで持っていかなきゃいけないと思っていたんだ。

数日間はパートナーのポーリナと子どもたちと一緒にお祝いしたりして過ごせたけど、それが終わればまたコースに戻って緊張の日々が続く。これまでのキャリアで、間違いなく“いま”が一番調子が良く、良いプレーができていると思う。すべてのピースがカチッとハマっているような感覚で、どんなプレーにも自信が持てている。まだまだ改善の余地もあるとも思っているけどね。同じように3勝した2017―18年シーズンと比べても、いまの方が良いゴルフができている。

初の年間王者となったダスティン・ジョンソン(Sam Greenwood/Getty Images)

■Qスクールでもらった2万5000ドルに驚いた過去

フェデックスが僕ら選手のために用意してくれている賞金(年間王者は約16億円)には本当に感謝しているけれど、僕自身にとっては、もはやお金の問題ではないんだ。僕にとってもっとも大事なのは、トロフィそのもの。キャリアに恵まれて、今はありがたいことにお金に関しては心配がいらないまでになった。だから、今は勝つこととトロフィを獲得することの方が大切で、お金には本当に興味はないんだ。とにかく今はトーナメントで優勝したいし、トロフィを手に入れたい、ただその一心だ。

フェデックスカップチャンピオンという名誉は、僕が是が非でも手にいれたかったものだ。試合を終えて、あのトロフィを手に持つことが目標の1つだった。キャリアの必ず成し遂げたいことの1つだったし、これで夢が叶った。次の目標は、もう一度トロフィを獲得することになる。

プロゴルファーになって間もない頃は、心持ちも少し違っていた。(2007年の末に)Qスクールを通過してようやくツアー参戦への切符を手に入れて、確か2万5000ドル(約263万円)くらいの小切手をもらったことを覚えている。当時、僕の口座には数百ドルほどしかお金が入っていなかったから、急にお金持ちになったような気がしたよ。

その後、初めてのトーナメント「ソニーオープンinハワイ」で10位に入賞した。当時の賞金が…はっきりとは覚えてないけど、10万ドル(約1054万円)とかで…。あれは大きかったね。当時の僕にとっては、とてつもない大金だったよ。

■心強いパートナーと実弟の存在

ダスティン・ジョンソンは弟のオースティンと年間王者のタイトルを勝ち取った(Getty-Images)

「ツアー選手権」にポーリナが来てくれたことも、すごくよかった。一緒に過ごせて最高だったし、息子たちにはFacetimeでトロフィを見せてあげられたんだ。まだそれが何なのか分かるほどの年齢にはなっていないんだけどね。パパがトロフィをもらったこと、そしてゴルフのトーナメントで優勝したことは分かったようだった。とても喜んでいて、優勝直後に子どもたちとFacetimeで話せたのはすごく嬉しかった。

僕の実の弟でキャディでもあるA.J.(オースティン・ジョンソン)は、僕のゲームにとってとても大きな存在だ。兄弟だから、もちろんチームワークは最高だよ。A.J.はグリーンを読むのがうまく、僕がラインを読んで、その読みがほぼ同じだった時は、お互い良い仕事していると思える。シーズン終盤戦で彼は素晴らしい仕事をしてくれたし、弟と一緒に大会を回れる事を嬉しく思っている。

「マスターズ」もとても楽しみだ。今はかなり自分のプレーに自信があるから、ここから先の数ヶ月がとても楽しみでならない。でもその後のオフも楽しみだな。ここまで来るのは長かったけれど、ある意味そのおかげで良いプレーができたのかなとも思っているよ。

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