2014年 全米オープン

PGATOURライターズ厳選・2014年ハイライト(3)心地よきパインハースト

2014/12/24 06:00

By Sean Martin, PGATOUR.COM

パインハーストNo.2で行われた全米オープンは大会史上極めて珍しいコースセッティングとなった

パインハースト・ナンバー2のコース改修は2014年の「全米オープン」を、独特の大会に仕立て上げた。米国のナショナルオープンのトレードマークともいえる狭いフェアウェイと深いラフは姿を消し、“ネイティブエリア”と呼ばれる砂地と粗雑な短い芝がそれに取って変わったのである。

今年の「全米オープン」を個性的な大会にした要因はコースだけではない。ゴルフ界最大の大会を通して、パインハーストという小さな町の魅力が感じられた。毎日、何千人という人々が訪れるメジャーのほとんどの大会にとって不可欠なシャトルバスへの乗車は、どこよりもその道のりが長いものであった。

パインハーストの1日は、バスへの乗車だけでなく、カロライナ地方の涼しい空気を感じながらコースへと歩く1マイル(約1.6キロ)の道のりで始まった。「心地良い」という言葉が、この毎日のささやかな遊山を表現するのに最もふさわしい。長い1日の仕事を始める上でリラックスできるひと時であり、夜は気持ちを解きほぐすのに打ってつけの時間となった。

この最高の機会を有効利用したのは我々だけではなかった。ライアン・ムーアヨナス・ブリクストはコースへと向かうのに、高級車による送迎の優遇を必要としなかった選手だった。彼らも歩いたのだ。毎朝の“通勤”途中に。ファンとともに横断歩道で信号待ちをしながら。

パインハーストの村は、古き良き時代を感じさせる古風な趣のあるコミュニティだ。携帯電話は、この万事がスローペースな場所では、いっそ不便な物となる。道に自動車でなく馬車が走っているのを想像するのすら容易だ。町にある小さな一階建てのギブン記念図書館にはタフツ公文書館が併設されており、その壁を飾る世界中から集められたドナルド・ロス設計のゴルフ場のフラッグの数々がパインハーストの長い歴史を物語っている。オールドビレッジゴルフショップは、ゴルフのアンティーク品やこの競技の歴史を伝える古い書籍で溢れていた。

パインハーストでゴルフの輝かしい過去の記憶に浸らないでいるのは難しい。それが私の2014年の思い出である。

2014年 全米オープン