2019年 ザ・メモリアルトーナメント

4打差逆転 ニクラスがカントレーに授けた笑顔

2019/06/03 12:25
優勝したカントレーはニクラスの隣で感慨に浸った(Andy Lyons/Getty Images)

◇米国男子◇ザ・メモリアルトーナメント 最終日(2日)◇ミュアフィールドビレッジGC(オハイオ州)◇7392yd(パー72)

常にクールに見える表情にはわずかな変化があった。少なくとも本人の中では…。パトリック・カントレーが“帝王”の教えに報いた。11アンダー3位タイから8バーディ「64」をマークし、通算19アンダー。2位に2打差をつける鮮やかな逆転劇で、大会ホストのジャック・ニクラスの目の前でツアー通算2勝目を飾った。

4打差を追ったカントレーは、同組の松山英樹を序盤のうちに引き離した。2オンに成功した11番(パー5)で6つ目のバーディを奪い、トップをとらえた。すぐ後ろの最終組のふたり、アダム・スコット(オーストラリア)とマルティン・カイマー(ドイツ)を抜き去り、最終18番では3mのパーパットを沈め、大会の最終ラウンドのベストスコアを完成させた。

「最後のパットを決めて、このコースで、ジャックの前で勝てた。どれほどの気持ちかは言い表せられないよ」。松山と握手を交わしたあと、グリーン脇で観戦していたホストのもとに歩み寄った。カリフォルニア大ロサンゼルス校時代の2011年に米国のアマチュアゴルファー最高峰の栄誉である「ジャック・ニクラス・アワード」を獲得。12年に鳴り物入りでプロの世界に飛び込んでから、レギュラーツアー初勝利を得るまでに5年を要した。

拠点をニクラスのホームコースのひとつである、フロリダのベアーズクラブに置いている。17年にこのオハイオでの「メモリアルトーナメント」に初めて出場した際、カントレーはニクラスの元に出向いて尋ねた。コースを賢く攻めるためには「どうやってプレーしたらいいですか?」。会話は1時間半にも及んだという。

その教えもあってか、同年35位、昨年は4位と好成績を残してきた。そして今年、大会2日目のラウンドを終えた後、コースでの昼食中に会ったニクラスに、こう助言された。「周りを見回してごらん。外に出て、素晴らしい時間を過ごしている人々を見なさい。自分がどうしてここにいるかに気づいて、リラックスして、楽しむんだ。それで試合を勝ちに行こう」

ラウンド中に表情を緩めることはほとんどなく、いつも沈着冷静で知られ、ブラックのウエアがよく似合う。そんな27歳はこの日、その言葉をバックナインで繰り返した。「彼は15番で笑顔を見せていたよ」と振り返ったのはニクラスだった。

4月の「マスターズ」から個人のストローク戦は4試合連続でトップ10入り。初夏の調子を最高の形につなげたカントレー。「誰から同じようなことを聞くよりも、ジャックから聞けば重みが違う」。もちろん、満面の笑みで勝利に酔いしれた。(オハイオ州ダブリン/桂川洋一)

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