変化を恐れなかったミケルソン 43勝目「最高の気分だ」
◇世界選手権シリーズ◇WGCメキシコ選手権 最終日(4日)◇チャプルテペクGC (メキシコ)◇7330yd(パー71)
フィル・ミケルソンが2013年「全英オープン」以来となる米ツアー通算43勝目を飾った。通算16アンダーで72ホールを終えたジャスティン・トーマスとのプレーオフを1ホール目で制し、47歳は長い空白の時間に終止符を打った。
5年ぶりの勝利の瞬間に笑顔はなかった。プレーオフ1ホール目の17番(パー3)、トーマスのパーパットがカップ脇をすり抜けたのを見届けたミケルソンは、静かに歩み寄って手を差し出した。「言葉が見つからない。この4年間はタフだった。いいプレーができていなかったが、信じてやってきて、ついにやり遂げた。最高の気分だ」
首位と2打差でのスタート直後から、リーダーボードは大混戦。ミケルソンが出だし1番から2連続バーディを決めると、トップには4人が並んだ。最後にぶつかったのは、ハーフターンした時点でトップタイに並んでいたトーマス。最終18番で残り120ydの第2打をカップに沈めてイーグルとしクラブハウスリーダーになった。
2打差で4ホールを残し、レフティの頭に浮かんだのは2004年「マスターズ」最終日のシーン。「あと2つバーディが必要だと思った。あのマスターズの時はアーニー・エルスに残り3ホールで1打差だったんだ」。15番(パー5)をバーディとすると、16番で5mのチャンスを生かして再びトップタイに。「本当に大きなパットだった」とガッツポーズを作った。
長い未勝利の時間に、ミケルソンは自ら何度も変化を求めた。2015年末、新たにアンドリュー ・ゲットソン氏をコーチとして招き、昨年6月には25年連れ添ったキャディである、ジム・マッケイ(通称ボーンズ)氏と離別。そのバッグは現在、実弟のティムが担ぐ。新しい相棒は終盤15番で「いつものようにゆっくり歩こう」とアドバイス。兄は「難しい状況で落ち着かせてくれた」と感謝した。
47歳8カ月16日での勝利はWGC最年長優勝記録を更新した。「きょうに限らず、若い選手と戦えるのはすばらしい機会。本当にありがたい」。新たな金字塔を打ち立てても「僕は年齢を感じないよ」と言い切る。「この年齢まで、このレベルでプレーする人はそういないだろうけどね。体は元気だし、またベストなゴルフができ始めている。今まで打てなかったようなショットだって打てている。今までにないくらいドライバーショットも飛んでいる」。あと7勝で節目の50勝になる。「いつかは分からないけど、僕はそこまで行くよ」
目の前にあるのは、通算4勝目を狙う4月の「マスターズ」だ。「オーガスタの前に勝ったのは本当に意味がある。オーガスタまでに勝つ必要があったんだ。自信が膨らんだし、いっそうやる気になる」。グリーンジャケットを争う戦いに、優勝候補の一角としてカムバックする。(メキシコ・メキシコシティ/桂川洋一)