「あの寄せ方しかない」松山英樹、18番マジカルチップで6打差16位
◇メジャー第1戦◇マスターズ 2日目(7日)◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7435ヤード(パー72)
目の肥えたオーガスタのパトロンたちの期待以上のプレーで締めくくった。最終18番、松山英樹はグリーンの奥からのアプローチをみごとにピンそば80cmに寄せてパーセーブ。5バーディ、1ボギー1ダブルボギー「70」をマークし、通算2オーバーとして54位タイから16位タイに急浮上した。
初日は4オーバーで、予選通過圏外のポジション。強弱のついた風を2日続けて浴びながら、松山は「自分の状態が良くないので何も考えていなかった」と、スコアボードは気にもとめずにプレーに集中した。2バーディを決めた後、7番で第1打を右の林に曲げ、2打目は木を直撃してボールが戻ってくるトラブル。2日連続で同じホールでダブルボギーをたたいたが、悪い流れには傾かなかった。
「(7番は)やっぱり状態が悪いので、無理をしたくなるところだった。でも、きょうは8番、10番で(バーディを)獲れたので、流れ良くできたかなと思います」。グリーン上での感触は悪くない。12番(パー3)では4.5m、14番も3mのパーパットを沈めてリズムを持続させた。
本調子でなくとも、スコアをまとめる底力。真骨頂は終盤2ホールにあった。17番、グリーン右奥から60ydの第3打はLWでピンそば1mに。「思ったより飛んじゃってビックリした」というが、パーセーブして16番(パー3)からの2連続ボギーを回避。そして18番、グリーン左奥から段を下るアプローチは、ピンよりもはるか左にSWで打ち出し、半円を描くようにスライスラインを伝わせ、ピンをかすめて80cmについた。
傾斜を利用した“マジカルチップ”にグリーン周りは大熱狂。それでも松山はホールアウト後、「映像も見ているし、何回も練習ラウンドをしてきて、あの寄せ方しかないと思っていた」と、こともなげに解説した。初出場でローアマチュアを獲得した2011年から6回目の出場、ちょうど20ラウンド目で、経験と想像力、技術すべてが融合した1打を見せた。
上がり2ホールの2つのパーセーブは、メジャー制覇への可能性を失わないための2ストロークだ。前日11打あった首位との差は、6打に縮まった。「それでも6打ある。なくなるように頑張りたい。相手は左右できない。自分が頑張るだけ」と、日没直前の練習場はオーガスタでも独り占め。「あした、あさっては風が吹かない。我慢しているだけではチャンスはないと思います」。大混戦に様変わりしたレース。ムービングデーに先頭集団に躍り出る。(ジョージア州オーガスタ/桂川洋一)