【藤田寛之専属キャディ・梅原敦のマスターズレポート2013<8>】
トータル20オーバー。藤田さんの2度目のマスターズ挑戦が終わりました。
いろんな手段を駆使してオーガスタ攻略に挑んだんだけど、全てことごとく跳ね返されました。今回の藤田さんの状態ではとても敵う相手ではなかったですね。
でもね、負け惜しみに聞こえるかもしれないけど、藤田さんの調子さえ良かったら何とかなる気がするんです。優勝争いするとか、上位に入るとかそういう事じゃなくて、オーガスタとは良い勝負ができそうな気が。
最初に連れて来て頂いた時には、「世界にはこんな恐ろしいコースがあるんだ・・・」って驚愕したけど、今回は、結果は別にして、攻略ルートはしっかりと見えていましたから。このコースにはラッキーが全くありません。ミスショットに対しては、容赦なくペナルティが課せられます。まさにコースvs技術。力の無い選手が上位に入る事は絶対にないでしょうね。
藤田さんの状態は、今までに見た事がないぐらい悪かった。本人は絶対に言わないだろうけど、疲労骨折による練習不足の影響は大きかったんじゃないでしょうか。後にも先にも、藤田さんが「85」を打つ姿を見るのはこれっきりでしょう。日本のゴルフ場なら、藤田さんがどんなにボロボロでも、どんなに“適当に”やっても絶対に85は打たない。それだけここは恐ろしく難しいゴルフ場だって事だけは、わかって頂きたいです。
でも、恐ろしくて、とんでもなく難しくて、立ち上がれないほど叩きのめされるけど、来れば来るほどまた来たくなるのがオーガスタなんです。ここでのキャディは、たまんなく面白いんですよ。1ショット1ショットでこんなに頭を使うコースはここ以外にはありませんから。
ショットにしてもパットにしても「あの辺でいいですね」なんてジャッジは皆無です。落とすエリアはただ1つ。キャディはその場所を伝え、選手がそこに打つだけ。オーガスタは究極のコースマネージメントが必要なんです。だから面白いのかな。
今日の後半にね、藤田さんに「藤田さん、何度もなんて事は絶対に言いません。でもあと1回、あと1回だけここに来ましょう!それがオーガスタとの最後の勝負です」って言ったら、藤田さんはその時は、「お前、簡単にそんな事言うなよ!ここに来る事がどんなに大変な事か・・・」って言ってたけど、最終の18番グリーンに上がる前に藤田さんが僕にボソッと言ったんです。
「今度来る時は、セッティングを変えて来よう。ここはボールを止めきらないと勝負にならないから」
これまでの2回は、練習ラウンドです。必ずまたここに帰ってきますから。来週から始まる日本ツアーでまた頑張って、マスターズ出場の権利を掴み取りますからね。
待ってろよオーガスタ!今度こそ絶対、絶対倒してやるからなー。