ニクラスのコース設計理念
あのタイガーでさえ、記録ではまだ追いつけないジャック・ニクラス。しかし、もし彼が一度もゴルフクラブを握らなかったとしてもゴルフ界に「偉大な功績」を残せていたであろう。それは彼が18ものメジャー大会を制してきたのと同じだけの情熱を、コース設計の世界にも注いできたからである。世界中に彼が生んだ212もの名コースを見れば、ニクラスのゴルフに掛ける情熱と愛情が分かる。
そんなニクラスのコース設計に対する真剣ぶりを、現在ノースカロライナ州シャーロット郊外に建設中の「ザ・クラブatロングビュー」に同行取材しつつドキュメントした。ただ名前を貸すようないい加減なものではなく、すべてのグリーンのアンジュレーションをひとつひとつ丁寧に見て周り、自分の経験を活かしつつ最高級のものを求めるニクラス。彼の追及は、時に設計メンバーたちにとって厳しい注文になることも多いが、誰もがニクラスの情熱に打たれているという。
デーブ・ヒートウォール(ニクラス・デザイン社18年勤務)
「ジャックは日が暮れるギリギリまで真剣にコースをチェックして回る。もし日がもっと長ければ時間がある限りずっとチェックを続けていたと思うよ。時間が足りないときは泊まって翌朝早朝にも働くんだ」
ひとつひとつのグリーンについて、すべての設定を考えて細かい注文をするニクラスがいた。
デーブ・ヒートウォール
「彼はうるさい注文をするわけではない。ただ自分の経験から様々なケースを想定して、全てのレベルのプレーヤーでも満足のいく上質なグリーンに仕上げるためのアイデアを出してくれる」
ジャック・ニクラス
「ブルドーザーを操縦する皆さんにも楽しんでくれって言ってある。彼らはただ言われた通りに機械を動かすのではなくて、自分のイメージするコースにどれだけ近づくことができるか、彼らなりの考えを示してくれと頼んである。最終的に決断するのは私がイメージを曲げてしまうと混乱してしまうから、私が責任を持って指揮を取る。最終形が私の望んだ形で、私の考えたコース戦略が活かされていれば、それを作り上げる方法は任せている。ぜひ私を驚かせるようなアイデアで助けてくれと頼んである」
メル・グラハム(コース共同経営者)
「ジャックの記憶力には驚く。世界中の様々なコースを見ているにも関わらず、ここのコースの細かい部分までちゃんと覚えていて、そして来るたびに新しいアイデアを持ってくる。現場に足を運んでくるし、貢献度は素晴らしい。それにコースの設計だけでなく、運営やコースメンテナンスの面まで全て合わせて考えてくれる。ちゃんと我々と同じだけの愛情と心がけをもって、このコースの設計を引き受けてくれている」