全英オープンの作り方/競技委員・山中博史のロイヤルリザムレポート<4>
英国ロイヤルリザム&セントアンズで行われる2012年の「全英オープン」に出場を果たした日本人選手は総勢8人。しかし、そのロープの内側でプレーヤーとともに、ボールの行方に冷静に目を凝らす一人の日本人がいる。日本ゴルフツアー機構(JGTO)の山中博史専務理事。かつて、青木功のキャディを務め、ここ10年来、海外4大メジャーすべての試合で、競技委員を務めている。トーナメントにおいて、欠くことのできない存在であるレフリー。それが“世界一”を決めるビッグイベントであれば重要度は一層高くなる。今回は大会を通じ、レフリーとしての立場、そして日本ツアーの代表としての立場から、全英の戦いをレポートしていただく。(GDO編集部)
「初日は藤田寛之選手、2日目は小田孔明選手の組につき、決勝ラウンドに入った3日目は藤本佳則選手とニック・ワトニー選手の組に帯同しました。藤本選手はティショットが安定せず、序盤6番までに4つボギーが先行してしまいました。それでも7番(パー5)で第1打をバンカーに入れ、2打目は出すだけといった状況からパーを拾った以降は、落ち着いたプレーができたのではないかと思います。難しい17番でバーディも獲りました。うまく“こらえた”上での「73」でした。
日本ツアーのルーキーとして活躍を続けている藤本選手。ここ全英の雰囲気にも飲まれることなくラウンドを続けています。今日は2回、ルーリングの処置に関してのやり取りがありましたが、それにも落ち着いて対処していました。自分のプレーにイライラしているシーンも見受けられますが、緊張したり、浮ついたりする様子はありません。見る方によっては、ふてぶてしくも感じられるかもしれませんが、キャディの前村さんとうまくコミュニケーションをとり、いつも堂々としている姿がやはり印象的です。
さて、試合を進めて行くオフィシャル、競技委員の立場といっても、様々な役割があります。私が今回担当している『レフリー』という仕事は、それぞれの組について18ホールを回り、まずスロープレーの防止に気を配りながら、スムースな進行を促すものが主です。『ゴルフには審判がいない』とはよく言われることですが、選手たちのプレーに対して厳しい“監視の目”を光らせるというよりは、状況によって『こういうオプションがありますよ』と声をかけるように、ルールにおけるミスを未然に防ぐための手助けをする仕事もあります。例えるなら、ワインのソムリエのようなものでしょうか。
ラグビーのレフリーにはマイクがついていて、実際にプレー中の選手たちに声をかけながら、判定を下していきます。彼らも、試合中に“余計な”ペナルティが発生しないように、試合の進行役を担っているのです。ですから我々も、もちろんスロープレーなどを裁く立場でもありながら、ラウンドを引っ張るチームの一員のような気持ちで18ホールを歩いています。
さあ、いよいよ最終日。キーとなるホールは、ひとつはパー5の7番、11番でしっかりとスコアを伸ばせるかというところでしょう。それぞれのパー4は、やはり難易度が高いようです。優勝争いから脱落しないためには、まず序盤の6番までをパープレー、もしくは1オーバーくらいまでに抑えて、7番では確実にバーディを獲っていきたい。後半に勢いをつけるためにも、選手たちはスタートホールから息の抜けないプレーを強いられそうです」