【GDO EYE】石川遼、海外メジャーで戦う意味
それは、完璧な放物線だった。左奥に半島のような形で池に突き出したグリーンに切られたピン位置は、その先端付近。全米オープン2日目、通算2オーバーで最終18番を迎えた石川遼は予選カットラインも気になる中、残り227ヤードの5Iで放った第2打を、花道からきれいな軌跡を描くドローボールで、ピン横へとぴたりとつけた。
前のホール、17番の第2打も見事だった。グリーンの手前エッジからピンまでは8ヤード。「8Iのフルショットだと飛んでもピンぴったりで、緩むと手前バンカーに入ってしまう。覚悟を持って打ったショットでした」と石川。これが、ピン手前2mについてバーディを奪う、予選通過へのウィニングショットとなった。
この日の石川のプレーは、見ている僕らを引き込む魅力を持っていた。全米オープンというメジャーの舞台。首位のロリー・マキロイを追いかけて好プレーを続けるY.E.ヤンと、暴れるドライバーを楽しむかのような余裕を見せるアンソニー・キムとのペアリング。3人それぞれが見せる1打1打への集中力が、ショットの質を高め、奥深いゴルフの世界へと導いてくれる。
海外でプレーをする意味はこういうところにあるのだろう。キャディの加藤大幸氏は指摘する。「日本にいるときと比べると、アプローチやパットの読みに掛ける時間が全然違う。日本だと早く結果を見たがって、すぐ打ってしまう時がある」。そして続ける。「だから、絶対早くこっちに来た方がいいと思う」。
環境が人を作るということは、否定できない。22歳のマキロイがメジャー制覇へ向けて力強く突き進み、石川が同世代らと世界一を目指してしのぎを削る。もちろん、本人も早く行きたいというのが本音だろう。その日はいつか来るはずだ。だけどその前にあと2日、そんな世界で戦う石川を見ることができるのは幸いだ。【ベセスダ/今岡涼太】