2024年 全米オープン

LIVから“2人目”のメジャー王者 デシャンボーの願い「この勝利がかけ橋に」

2024/06/17 11:35
18番で雄たけびを上げたブライソン・デシャンボー

◇メジャー第3戦◇全米オープン 最終日(16日)◇パインハーストリゾート&CC パインハースト No.2(ノースカロライナ州)◇7548ヤード(パー70)

1打リードで迎えた最終18番、ティショットが大きく左に曲がるのを見たブライソン・デシャンボーは動揺した。「もし彼がパーを取ったら、どうやって勝てばいいのか…」。2位にいたのは、前の組でグリーン上のロリー・マキロイ(北アイルランド)。その瞬間、場内で悲鳴がはじけた。1mのパットを外したライバルのボギーを把握し、「アドレナリンが出た。『大丈夫、行ける』」と力強く足を進めた。

左サイドの荒れ地からの2打目、バックスイングが思うように取れない位置から懸命に前方に運んだ。右サイドのバンカーからピンまでは55yd。寄せるのが難しい中途半端な距離から「人生最高のバンカーショット」が出た。

メジャー2勝目を再び全米オープンで飾った

砂煙に押されたボールはグリーン中央から転がり、ピンそば1mにピタリ。アイアンとウェッジのシャフトを7Iの長さで統一している“ワンレングスアイアン”の使い手。「長いウェッジを使っていることを永遠に感謝する。飛距離が出てホールの近くまで飛ばせたからね」。緊張のウイニングパットをカップに収め「71」で通算6アンダー。静寂を興奮のるつぼに変えた。

2020年の本大会以来のメジャー2勝目をかけ、3打差の単独首位で出た闘いは、10年ぶりメジャー5勝目を狙うマキロイの追い上げによって混とんとした。デシャンボーは5月「全米プロ」でザンダー・シャウフェレに敗れたばかり。「もう2位にはなりたくなかった」。少年時代に憧れたペイン・スチュワートが25年前に優勝したパインハースト、2年前に他界した父ジョンさんの姿をこの父の日に思い、負けたくなかった。

どん底からの再起。デシャンボーにも苦難の道があった

2022年2月、卓球に興じていた際に左手を負傷し、春先に左有鉤(ゆうこう)骨の手術を受けた。「どん底だった。以前と同じ力でクラブを握れるか分からなかった」。5カ月近く不振に陥ったが「人生を考え直すきっかけになった」のも事実。6月に新リーグ「LIVゴルフ」に移籍後もメジャータイトルをもう一度つかむことを目標にしてきた。

故ペイン・スチュワートと同じポーズで

サウジアラビア政府系資金を背景にするLIVと、かつて所属していたPGAツアーとの間にある溝は依然として埋まっておらず、交渉の終わりがいまだ見えていない。「率直に言うと、早く事態が解決することを願っている。この勝利が分断されたゴルフのかけ橋になってくれることを願う。僕はゴルフのためにベストを尽くし、ファンに素晴らしいエンターテインメントを届けたいだけだ」昨年の「全米プロ」を制したブルックス・ケプカ以来、移籍してからもメジャータイトルを手にしたLIVゴルファー。「過去は過去としてもう水に流そう。ゴルフというポジティブなゲームを本来あるべきところまで戻そう」と訴えた。(ノースカロライナ州パインハースト/桂川洋一)

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