12歳で「59」、下部ツアーでキャディ…ニック・ダンラップのアマ優勝への軌跡
◇米国男子◇ザ・アメリカンエキスプレス 最終日(21日)◇PGAウエスト スタジアムコース◇カリフォルニア州◇7187yd(パー72)
米国南部アラバマ州の都市バーミンガム。PGAツアーで33年ぶりのアマチュア優勝を達成した20歳のニック・ダンラップは当地のグレイストーンG&CCで育った。
米国シニアツアーのメジャー大会「リージョンズトラディション」の開催コースに、10歳になる頃には毎日、自転車でクラブハウスに通い詰めていたという。
両親は必ずしも熱心なゴルファーではなかった。ダンラップは日中、自らの意思でボールを打ち続け、営業終了後の夕方以降もこっそりコースで練習。自宅から100ydほどのところにある6番ホールのフェアウェイには、ウェッジショットの痕がいくつも残っていた。
クラブのヘッドプロ、ジョン・ギブソン氏はジュニア時代を良く知る人。PGAツアーのインタビューに「みんな、彼が競技に出ることを望まなかった。彼が勝つと思っていたから。私は彼に出ないように言わなくてはいけなかった」と明かす。
近隣のハイランドGCで行われたローカル大会で「59」をたたき出し、後続に13打差をつけて優勝したときはまだ12歳だった。
運動神経は抜群で野球やアメリカンフットボールでも非凡な才能を見せていた。アラバマ大ゴルフ部のコーチ、ジェイ・シーウェル氏は「野球部に入っても良い選手だったはず。家族でミネソタに住んでいたらアイスホッケーの選手になっていただろう。彼はそういう人で、生まれた環境がゴルフをやらせたんだ」と語る。
地元アラバマ大の選手が頻繁に訪れ、10人以上のツアープロが所属する名門コースにはいつも、ひとり腕を磨く姿があった。
15歳の頃には当地の指導役だったプロに帯同し、米下部コーンフェリーツアーでキャディも務めた。40℃近い猛暑のラウンドを終えた後、自身のトレーニングのためジムまで走って向かう姿に、バッグを預けたジェフ・カールは驚きを隠せなかった。
タイガー・ウッズ以来、史上2人目の「全米ジュニア」(2021年)、「全米アマ」(23年)での2冠達成者。そしてフィル・ミケルソン以来8人目のPGAツアーアマチュア優勝者には、早くから周囲の誰もが認める資質があった。